内容証明郵便で行う遺留分減殺請求
相続の基礎知識1.では、誰が相続人になるのか?という法定相続人について触れました。
では、それぞれの相続人に相続財産をどれだけ分配されるのか?という法定相続分や、内容証明郵便で行う遺留分減殺請求についてもう少しご説明いたします。
法定相続分とは?内容証明郵便で行う遺留分減殺請求とは?
法定相続分とは
民法では、それぞれの相続人が受け継ぐ相続財産の割合について規定しており、これを法定相続分といいます。
法定相続分の割合は次のとおりです。
第1順位の相続の場合(配偶者と子)
第1順位の相続の場合、配偶者が1/2、残りの1/2を、子の人数で等分します。
子の代襲者(孫など)は、代襲者の親である子が本来受け継ぐはずだった相続分を、代襲者の数で分け合います。
第2順位の相続の場合(配偶者と直系尊属)
第2順位の相続の場合、配偶者が2/3、残りの1/3を、尊属で等分します。
「母と、父方の祖父」といった世代の違う尊属がともに相続することはありません。
第3順位の相続の場合(配偶者と兄弟姉妹)
第3順位の相続の場合、配偶者が3/4、残りの1/4を兄弟姉妹で等分します。
ただし、半血兄弟の相続分は全血兄弟の半分となります。
※半血兄弟=故人と父母の一方が同じ兄弟姉妹。全血兄弟=両親が同じ兄弟姉妹。
配偶者が居ない場合、配偶者以外の相続人が居ない場合
上記それぞれの順位で配偶者が居ない場合は、それぞれ子、直系尊属、兄弟姉妹が全ての相続財産を等分します。
また、子、直系尊属、兄弟姉妹のいずれも居ない場合は、配偶者が全ての相続財産を承継します。
相続における養子の扱い
相続において、養子は実子と同等の扱いとなります。(§809/養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。)
離縁した養子や、縁組に無効や取消しがあった場合、別の者との特別養子縁組*により血縁関係が終了した子は、相続の権利がありません。
また、配偶者が婚姻前に別の者との間に儲けた子(連れ子)も被相続人の子ではないので、相続権がありません。 この場合でも、被相続人の生前に養子縁組を行っていれば相続人になれます。
* 特別養子とは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組を行った者のことをいいます。
<非嫡出子の相続分>
非嫡出子(嫡出でない子)とは、民法上、婚姻関係にない男女間に生まれた子のことをいいます。
非嫡出子は連れ子とは違って被相続人の子であり相続人となりますが、相続分が嫡出子の1/2となります。
遺留分とは
遺留分とは、相続人となる者が法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことをいいます。
この遺留分は、被相続人の贈与(生前の処分)や遺贈(死因処分)によっても奪われることはありません。つまり、例えば故人が遺言で他の者に全ての相続財産を相続させるよう指定しても、あるいは亡くなる直前にに財産を誰かに全て贈与してしまっていても、相続人となる人はこの遺留分を取り戻すことができるわけです。
相続人に保障されている遺留分は、次のとおりです。
相続人 |
全体の遺留分 |
個々の遺留分 |
配偶者のみ | 相続財産の1/2 | 配偶者1/2 |
配偶者+子 | 相続財産の1/2 | 配偶者1/4、残1/4を子が等分 |
子のみ | 相続財産の1/2 | 1/2を子が等分 |
配偶者+直系尊属 | 相続財産の1/2 | 配偶者1/3、残1/6を尊属で等分 |
直系尊属のみ | 相続財産の1/3 | 1/3を尊属で等分 |
配偶者+兄弟姉妹 | 相続財産の1/2 | 配偶者1/2、兄弟姉妹0* |
兄弟姉妹のみ | 遺留分なし | 兄弟姉妹0* |
* 兄弟姉妹には、遺留分はありません。 |
遺留分の基礎となる財産とは
遺留分の基礎となる財産は、次のように算定します。
- 相続開始時(死亡時)の被相続人の財産
- まず、遺産目録を作成するなどして被相続人の財産を計算します。
- 生前に相続人に対してなされた、婚姻、養子縁組、生計の資本としての贈与(特別受益)も加えておきます。
- 相続開始時の財産に加算するもの
- 相続開始時より1年以内にした贈与
- 相続開始時より1年前の日より前にした贈与について、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与
- 不相当な対価による有償行為
- 相続開始時の財産から減算するもの
- 被相続人の負っていた債務
- 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、加算時に家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って減算しておきます。
- 負担付贈与の負担分 * ⅱ、ⅲは、本来減殺時に考慮すべきものですが、基礎財産計算時に考慮しておく方が全体を把握しやすいでしょう。もちろん、減算した結果を加算して考えても同じことです。
遺留分減殺請求とは
遺留分は、民法が相続人に保障している権利ですので、- 遺言による贈与(遺贈)や
- 被相続人による生前の贈与など
「自分の遺留分が侵害されているので、返還して欲しい。」というこの意思表示を遺留分減殺請求といいます。
<故人の遺志と遺留分減殺請求>
いかに遺留分が民法で保障されているといっても、故人の意思を尊重することは大事なことです。 遺留分減殺請求を行う際は、故人の気持ちや減殺請求後の円満な親族関係を十分に考慮し、「それでもなお、納得がいかない場合に行う」といった慎重な態度で臨んでください。
もちろん、民法で保障された権利ですから、決心した限りは誰からも非難されることはありません。
遺留分減殺請求は、必ず内容証明郵便で。
この遺留分減殺請求は、口頭で行っても書面で行っても構いません。
しかし、口頭で行った場合は、何の証拠ものこりませんので、一般的には内容証明郵便で行います。 実務上の事を申しますと、遺留分減殺による物件返還請求については、当事者での協議が整わない場合、家庭裁判所の調停手続を利用するなどの流れとなります。
最高裁判所のHP(家事事件について)においても、「遺留分減殺は相手方に対する意思表示をもってすれば足りますが,家庭裁判所の調停を申し立てただけでは,相手方に対する意思表示とはなりませんので,調停の申立てとは別に内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります。」と述べられており、遺留分減殺請求に係る内容証明郵便は、その後の争訟において決定的に確実な証拠となります。
遺留分減殺請求ができる期間
遺留分減殺請求ができる期間(時効期間)は、民法で次のように定められています。
- 遺留分権利者が「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったこと」 を知った時から 1年間
- 相続開始のときから 10年間
内容証明郵便を送ることで、上記の期間中に「確かに遺留分減殺請求の意思表示をしたこと」が証明できます。 遺留分を侵害された時は、できるだけ早急に減殺をご検討ください。
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