帰化申請への韓国民法改正の影響

 このページでは、平成20年1月1日より施行された改正韓国民法が帰化申請へ与える影響についてまとめています。

 

帰化申請の難化を予想した平成19年暮の駆け込み帰化申請

 昨年(平成19年)の年末は、大阪法務局国籍課の待合の込み具合は大変なものでした。

 12月に入ると普段比較的閑散とした午前中でさえ朝の9時から待合に行政書士や申請者が並び、12月中旬ともなると午後は相談室内の5ブースも待合室も満員、国籍課内に2、30人がひしめいている状況が連日続き、最終週に入ってやっと、「普通に混んでいる」状態に落ち着きました。

 実際のところは通年の本局申請数としては1,350件弱程度に終わりましたから前年より少し伸びた程度の結果ではありましたが、12月は週平均40件程度と普段の約2倍の申請受付がなされていたようです。

 もちろん、これは改正民法の影響を考慮された韓国・朝鮮籍の方の駆け込み申請によるものと思われます。

 早くから、このASC申請支援センターのホームページでも改正韓国民法の施行による帰化申請の難化を取り上げておりましたし、帰化を検討されている方は平成20年以降の申請の難化を十分に予想されていた故のことであったと存じます。

 さて、平成20年1月1日を迎え今後、韓国・朝鮮籍の方の帰化申請がどのように変わってくるのか、書いておきたいと存じます。

帰化申請書類に対する影響~韓国戸籍制度の廃止

 韓国の役所は今日、1月2日が出初です。

 さっそく申請支援センターからも釜山広域市沙上区庁に新制度下の証明書の請求をしてまいりました。おそらく日本の行政書士を通じての直接請求としては『日本初』のものでしょう。

 加えて韓国役所職員の見解も聞いてまいり、新制度での証明書類がこれまでの戸籍に変わるものとして必要な情報が十分に記載されるかどうかを確認してまいりましたので、行政書士の立場としては胸を撫で下ろしているところです。

 しかし、一般の申請者の方や、これまで韓国・朝鮮籍の方のみの帰化申請を扱ってきた事務所の方にとっては、これまでのように「本国書類としては戸籍とその翻訳だけでよい」というものでは済まなくなりました故、少し戸惑われるかもしれませんので、簡単に説明しておきましょう。

 韓国民法が改正されたからといっても、日本の帰化申請における要件が厳しくなったわけではないことを初めにご理解ください。帰化申請は、主に国籍法という日本の法律に基づいて審査されるからです。

 しかし、戸籍制度自体の廃止~家族関係登録制度下での各種証明書の発行という劇的な変化は、帰化の添付書類がさらに増えることを意味します。  ひとことで言うなら、これまで戸籍ひとつで済んでいた本国書類関係が、韓国・朝鮮籍以外の方の申請と同様になるということです。

 これまでも、例えば中国籍の方の申請では、本人や子供の出生公証書、父母や本人の結婚公証書・離婚公証書(ほとんどの申請の場合、離婚公証書を添付される場合は結婚証を所持していない為前婚の婚姻公証書を添付できないことが多いですが、ASCではできる限り前婚の婚姻公証書も添付するようご指導申し上げています)、死亡公証書、親族関係公証書、そして受付直前に国籍公証書を添付しなければならず、さらに親族関係公証書の制度の無いフィリピン籍の方の申請などでは兄弟姉妹全員の出生証明書などを添付し、ケースによっては、加えて養子関係・認知・親権を証する書面を用意する必要も生じるのですが、韓国・朝鮮籍の方の申請では就籍していない方を除き「戸籍」ひとつで全てが済んでおりました。これが韓国・朝鮮籍の方の帰化申請が他国籍の方と比べ、圧倒的に簡単な理由のひとつだったのです。

 ところが今後は「現在韓国戸籍」自体が世の中になくなってしまうわけですから、原則に戻って、他の国籍の方と同じ内容の書類が必要になることは明確です。

 韓国の新制度は「家族関係登録制度」と呼ばれ、この制度下では基本証明書、婚姻関係証明書、入養関係証明書、親養子入養関係証明書、家族関係証明書の5つの証明書類が発行されます。  これらの証明書は、日本の戸籍記載事項証明書(多くは戸籍関係届の写し)とは違い、どちらかというと受理証明書に近い非常に簡素なものです。

 それぞれの役割と帰化申請書類としての対応は次のとおりです。

 1.基本証明書

  出生、国籍関連、親権、限定治産、禁治産、親生否認、改名など基本的事項の証明→出生証明書、国籍証明書、親権を関する書面

 2.婚姻関係証明書

  婚姻と離婚に関する履歴の証明→結婚証明書、離婚証明書

 3.入養関係証明書

  入養(日本での普通養子縁組に近い)に関する証明→養子関係を証する書面

 4.親養子入養関係証明書

  親養子入養(日本での特別養子縁組に近い)に関する証明→同上

 5.家族関係証明書

  本人と配偶者、父母、子女に関する証明→親族関係証明書

 このように見ると、帰化申請に必要な情報、つまり日本の戸籍を作成するために必要な情報はほぼ網羅されていますので「現在戸籍」が存在しなくてもまず心配はないと言えますが、問題は本人の事実認識との関連による取得書類の選別及び追加に関する部分です。

 家族関係証明書が発行されるのが唯一の救いで、この証明書が制度上発行できなければ兄弟姉妹の基本証明書を集めさらに母親の申述書も必要なケースも発生するところでした。  但し、何のために親族関係証明書を取るのか理解していない一般の申請者にとっては基準者を誰にするのかさえわからず混乱することでしょう。

 家族関係証明書に関してはもうひとつ重大な観点があります。それは家族関係登録制度におけるデータ作成が改正原戸籍とでも言うべき「現在戸籍」により行われた可能性が高いことです。つまり、兄弟姉妹が先に帰化した後に戸籍編成が行われていたり、婚姻等による分籍の後に新戸籍が作成されていたりすると、家族関係証明書上には反映されていない場合もあるのではないかという危惧です。韓国国民全員につき除籍謄本まで遡ってデータ収集を行う余裕が改正韓国民法が韓国国会で可決され公布された2005年3月31日から猶予期間の昨日までの間にあったのかははなはだ疑問であるからです。

 もし、現在戸籍編成前の除籍が反映されていないとすれば、除籍された兄弟姉妹の家族関係証明書を全て取得するか、父母の婚姻時期前後に編成された除籍謄本まで遡る必要が出てくるわけです。

 これは、せっかく平成15年7月の帰化書類簡素化によって優遇された特別永住者を含む韓国・朝鮮籍の方の帰化申請添付書類が、実際には、それ以外の中国籍の方やその他の国籍の方以上に煩雑になってしまうことを意味します。

 このあたりは今後も多くのケースを申請支援センターが扱っていく中で明らかになっていくことでしょう。また、果たして基本証明書が国籍証明書としての要件を満たすかどうかも、法務局との打ち合わせの中で慎重に考えていかねばなりません。おそらく法務局や法務省としても新しい証明書に関する十分なデータが今後のわれわれが提出していく申請添付書類によって蓄積していくまでの間は様子見するしかない状態であると存じます。  さらには、既に取得している戸籍謄本や今後取得する最新の除籍謄本での代用についても(個人的には、これについては6ヶ月間の猶予があるのではないかとにらんでいますが)、いちはやく法務省見解を知りたいところです。

 これまでは特別永住者の給与所得者で比較的お若い方であれば「何度も足を運んで、ただ法務局に指示されるままに書類を集めていったら、あまり苦労もなくなんとなく許可になりました」というケースも少なからずあったようで、戸籍の翻訳さえ何とかなれば自己申請も夢ではない状況だったのですが、ただでさえ日本国内書類及び本人認識事実との整合を慎重に行わなければならなかった戸籍が分解されてしまい、各添付書類の法的意味合いを把握していない方では申請が難しくなりました。  これはわれわれ行政書士にもいえることで、各書類の「読みどころ」を明確に理解していないと受任から受付までこれまで以上に時間が掛かってしまう結果となりますので、プロフェッション(奉仕的職業専門家)として一層の精進を続けたいと存じます。

●帰化申請ご参考リンク

 帰化申請重要リンク⇒ 韓国大法院、家族関係登録制度の案内

 帰化申請重要リンク⇒ 同、証明書様式についての映像(wmp)等

帰化申請取得に関する発給要件~新制度での請求権者

 韓国民法が改正された平成17年直後から、日本人が韓国戸籍を取得することはできなくなってきたことは前にも書いたとおりです。   それ以前には戸籍制度は公示目的ととらえられ、不当目的でない限り韓国人であれ(韓国から見た)外国人であれ、誰でも戸籍謄本を請求することができました。   しかし改正後ただちに、まず外国人による戸籍取得が禁止されたことは、発給権者の制限の兆候であったといえるでしょう。

 昨日全ての改正民法が施行され、実務上も今日からは、家族関係登録簿の各証明書は本人、直系尊属、直系卑属、配偶者、兄弟姉妹に受給が制限されました。

 これは時代の流れと申しますか、個人情報保護の観点からすると仕方のないものです。日本においても戸籍関係に係る書類は原則、その戸籍に掲載されている者しか取得できませんし、掲載されている者であっても戸籍抄本しか(市町村の)戸籍課の担当者が交付しない場合もあります。なお、われわれ行政書士は受任した事件に関する場合のみ、委任状無しに職務上請求することができます。また、現時点では外国人登録原票記載事項証明書や各種届の記載事項証明書、税務関係書類等については職務上請求はできませんので委任状をいただいています。

 もちろん、韓国政府に対しては日本の職務上請求書は使えませんので、今後は本国書類についても依頼者から委任状をいただいて対処することになります。

 書いていただく委任状の通数が増え、お手間をお掛けする事になりますが、ご了承ください。

帰化申請に与える影響と対応のまとめ

 韓国での戸籍制度の廃止と家族関係登録簿制度の施行後の対応をもういちど簡潔にまとめておきます。

  1.帰化書類が非常に煩雑化するだけで、帰化要件が厳しくなるものではない。

  2.これまでの韓国・朝鮮籍以外の方の申請の添付書類に対応する各証明書を集めること。

  3.第三者による本国書類において、委任状が必要となった。

  4.これまでのように添付書類の意味を理解しないままでの自己申請ができなくなる。

 いずれにしても、今年からの韓国・朝鮮籍の方の帰化申請については、「日本政府(=日本国民)が垣根を下げていこうと努力しているのに反して、本国の制度改正によって難化してしまった」という非常に同情すべき事態となったわけですが、決して制度の変革を嘆くことなく、申請支援センターとしてはこれまで中国籍の方の帰化申請ほか、韓国・朝鮮籍以外の方の申請を多数こなしてきた実績と経験を生かし、申請にあたり悩んでおられる方々に利便に寄与していくことが使命であるとポジティブにとらえていきたいと願っています。

 

一般にASC申請支援センターに帰化申請をお任せいただいた場合、ご本人が法務局に出頭されるのは、「本申請」「面接」と晴れて帰化が許可された際の「帰化者の身分証明書の交付」の3回のみとなります。

 

事前相談で何度も足を運び書類の不備を指摘され続けて、過去にあきらめられたご経験をお持ちの方も多いことでしょうが、いちど当センターにご相談ください。

 

ご相談CALL 06-6949-5931 (コクサイ)

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帰化申請や国際結婚の際などの在留資格認定についてご相談は一生に関わる重大事ですので「面談にてのみ」相談を受けております。

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