素行条件(帰化申請の条件)の条文
素行条件は、帰化申請の条件(帰化要件)のひとつです。帰化申請において、素行条件は前科だけでなく、さまざまな素行全体を審査します。素行条件について、このページで説明をしております。
※ご注意 帰化申請では、帰化申請の条件をひとつひとつ判断していくのではなく「総合判断」がなされます。他の条件の状況やその人の環境によっては、条件は厳しくなります。ひとつの条件だけで判断できませんし、判断しても全く意味のないことです。
国籍法第5条1項3号
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
三 素行が善良であること。
素行条件(帰化申請の条件)の解説
帰化許可には素行が善良であることが求められます。条文自体はいちばん短いのですが、帰化条件中でいちばん論点が多く厳しい条件です。
素行条件で真っ先に考えなければならないこと
素行条件を判断する上で、一番最初に審査されることは何か?
それは、前科や交通違反などの過去の犯罪・反則歴でも、税金の未納でもありません。
その答えは「今回の帰化申請に嘘がないこと!」です。
と、二十数年前のホームページの黎明期に、ASC申請支援センターが書いてから久しくなります。
みなさんコピペしてホームページを作成されるので、今ではどこの帰化サイトでも書いています。
でも、実際に申請支援センターの相談会などにおいて、「過去に専門家に申請してもらったのにダメになりました」と話される方の中には、このことが理由で不許可になったケースが結構多く見受けられます。
一方で、馬鹿正直に不要な事まで開示されて不許可になられる案件も多く見かけられます。「何が見抜かれるのか」「何を話さねばらないのか」の線引きが帰化申請の専門家の腕の見せ所です。
しかし、虚偽が無い事が基本となるのは、ホームページに書くのが恥ずかしいぐらい当たり前すぎる事です。いくら申請書類上で素行に何の問題もないように書かれていても、帰化申請自体が虚偽であれば何の意味もありません。これは素行条件のみならず帰化要件全体に関する基本といえるでしょう。無論、虚偽申請は、刑法上の罪でもあります。
ですから、法務局は初回相談、書類点検、受付、面接、及びそれらの連絡のためのやり取りなどを通じて、常に、嘘をつきやすい人格でないかということを、じっくり観察しています。また、(面接だけではなく)様々な面談後、一挙一動について気になることは特記事項として、全て記録されています。
もちろん虚言癖のある方などそんなにいらっしゃるわけはないのですが、プライバシーに関することで「小さなことだから」とあいまいに答えたことから段々と嘘が大きくなってしまうことなどしょっちゅうあります。当センターからの申請では、申請者側から言うべきこと、言わなくてもよいことをきちんとアドバイスいたしますので心配は無いのですが、どんな言葉からどんな話の流れになるのかは一般の方はご存じないわけですから、ご本人をあまり責めるのも酷なことです。
しかし、「なぜ、それほどまで細かいことを言われなきゃならないんだろう」と思われる方も沢山いらっしゃることでしょうが、日本人の立場からしましたら、「ええ加減な人間に日本人になって欲しくない」とか「虚偽申請をするような人間は、帰化どころか日本から出て行って欲しい」と考えられても当然と覚悟しておかなければなりません。
特別永住者の方であっても「歴史の被害者だ」という態度で気を抜くことなく、真摯な姿勢でまじめな申請を心がけてください。
虚偽申請をしたら、許可になった後でも逮捕されます
万が一、虚偽の帰化申請がばれずに許可になったとしても、許可後に「必ず」発覚し、逮捕されます。
実際、申請支援センターからの帰化申請で許可になった人の中にも、当センターや法務局、入管をだまして帰化申請等をして、帰化が許可になった後に逮捕された案件が、数件あります。
共犯を疑われ、うちの事務所に大阪府警国際捜査課などから取り調べに来られたことが何度かあります。
虚偽の帰化申請は刑法157条1項にあたり同行使罪が定められていますから、日本人としての生活をしていく上で戸籍請求をしないわけにはいきませんから、一生、時効はありません。死ぬまで、発覚の恐怖におびえ続けていかなければならないのです。
「素行が善良である」とは
素行が善良であるかどうかは、下記のような事柄について、総合的に判断されます。単に「前科(刑法上、罪に問われたかどうか)」だけでなく過去の素行の全てについて厳しく審査されます。
- 所得税・住民税その他納税義務のある全ての税金の申告・納税状況
- 刑法犯罪及び交通違反・事故・処分の履歴
- 社会保険(健保・年金・介護・雇用・労災)の加入・納付状況
- 入管法・外国人登録法なども含めた違法行為の有無
- 他人に迷惑を掛けるほどの金銭的な失敗
- 暴力団との密接な関わりの有無
- その他全ての反社会的行為(身分的不貞行為も含む)
- 他人にいろんな意味での損害を与えたときの補償状況
上記中、暴力団との関わりについては素行条件だけでなく、思想要件(日本国憲法遵守条件)からも不許可判断をされますから、自分自身が構成員であるかどうかだけでなく家族や親戚も調査されます。
身近な親族に暴力団構成員が居る場合には、たとえ住居が別で、生計を分けていても、状況によっては簡単に不許可なりますから、注意しなければなりません。むしろ、暴力団の親族がいるのに許可となることは、よほどの明白な証明がないと難しいと考えた方が良いでしょう。
一般の社会通念に照らし合わせて、普通の真面目な生活を送られていれば十分です。しかし、本人自身では普通と考えていても第三者から見ると要件を満たしていないことも多いので、自分で判断することはできません。「前科となっていなければよい」というようなものではありません。例えば、義務教育の年齢であるのに日本で公的に認められた小中学校に通わせていなければ(日本人となる上では)憲法違反となりますが気が付かれていない方も多く居らっしゃいます。
相談に見えられたなられた際に「私は税金もしっかり納め、真面目に暮らして来た!」と胸を張って主張される方ほど、自分の過去を振り返る意識に乏しく、条件を満たしていない傾向が高いです。比較するならば「私は本当に申請できるのでしょうか?」と心細げに心配して尋ねられる方の方が条件を満たしている事が多いです。
素行条件上の補足事項
素行条件を判定する期間
よく「素行について、どこまで遡って法務局に話をしないといけないのですか?」という質問をされる方が居ます。前科やその他の素行上の重要な出来事をいったいどの時代のことまで話さなければならないか、と聞いてこられるのです。
「生まれた時まで全て」、というのがその答えです。もちろん、話すだけでは足りず、ちゃんと履歴書その2に記載してください。正直に履歴書その2に書かなかった方は、それだけで、今回の帰化申請はあきらめて下さい。帰化申請で最悪とされるのは嘘をつくことなのです。
過去の全ての積み重ねにより今のご自分の人格が形成されたのですから、その履歴は包み隠さず全部、報告しておくべきです。
しかし、多くの場合、法務局が許可不許可の判断をする期間自体は法定期間内と考えていいでしょう。特別永住者の方であればもう少し短く考えることができます。
ただし、自己破産や、その他の大きな犯罪などでもっと長く考慮されるものもありますし、オーバーステイなど入管法上の罪などは帰化を許可してよいと判断されるまで非常に長い年月が必要なものもあり様々ですので、一概にはいえません。
大昔の犯罪であったとしても、非常に大きな前科や反社会的行為であれば、そのこと自体が直接不許可要件とされなくても、現在の素行状況に対する審査がおのずと厳しく慎重にならざるを得ないことでしょう。また、当たり前のことですが、許可になるまでは帰化申請後も真面目に暮らしていかなければなりませんし、万が一、意図しなくとも、法律を破ってしまったときには報告を怠ってはいけません。
いずれにしても、もういちど重ねて申し上げておきますが、法務局に対して開示すべき内容は過去の全てです。前科となったかどうかとか、起訴されたか不起訴だったのかに関わりなく、反社会的な全ての行為について隠し事があることで、不許可案件となります。
法定期間以前の素行に関する重要な出来事は、「履歴書に書かなかったこと」を問題とされ、「現在の素行が悪い」として不許可となるのです。
犯してしまった罪に対して反省していなければ、「何年経ったら申請できる」とか「何年間は申請できない」とかいった議論自体、全く無意味です。つまり、反省していなければ「一生申請することはできません」。反省して悔い改めているかどうかは言葉では通じません。事件から後の生活の履歴のみが反省の証拠となります。
素行条件で不許可となる申請者の範囲
帰化申請は家族全員で申請が原則ですから、やはり家族全員で不許可になるのが原則です。
しかしながら全体的に真面目に暮らしているご家庭の場合には、素行条件については素行上不適合とされた本人のみ不許可になることも多いです。
とはいえ、不法行為の原因が他の家族にある場合や、不法行為による利益を家族で享受している場合、見て見ぬ振りをしていたような場合は、原則に立ち返り、家族全体が不許可となります。また、本人だけでは許可要件を満たさない家族が世帯主に付随的に申請していた場合なども、世帯主が不許可になると一緒に不許可となります。
素行条件上、相談を受けるべき方
次のような方は、素行条件上、不許可となる可能性があります。どうしても申請したい方は、法務局に行く前に相談会に参加された方が有利だと存じます。もちろん、程度によっては絶対に申請できません。
- 交通違反が多い方、重い交通違反がある
- 数年内に大きな交通事故をおこした
- 禁錮以上の刑を受けている※1
- 脱税等により、重加算税や過少申告加算税を受けたことがある(法人・個人とも)
- 昨年、転職をした。アルバイトを掛け持ちしていた。※2
- 市民税を会社から引かれていないが自分で申告していない
- 自己破産をしたことがある※3
- 入管法や外国人登録法上の違法行為がある
- 民事訴訟中である
- 不倫している、正式な妻の居る人と暮らしている
- 義務教育期間の子供を日本の正式な学校に入れていない
- 親族や、仕事関係に暴力団関係者がいる(申請できません)※4
素行条件に関する事項は、たとえ隠していても法務局による帰化の調査で全て露見します。相談会では包み隠さず申告してください。
注※1.罰金は禁錮より重い刑です(前科となります)
注※2.一年の途中で転職をされた方や複数のアルバイトをしていた方は一括して年末調整を行なっていない限り確定申告義務があります。結果として脱税になっているケースが多いです。
注※3.自己破産は、素行条件と生計要件の両面から不許可事由となります。
注※4.反社会的組織との密接な関係は、素行条件と思想要件の両面から受付自体なされません。隠していても必ず判明し不許可となります。
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