帰化申請の仕事をさせていただいていてしばしば感じる事は、ご依頼やご相談の案件の内容がその時期、その時期により偏りがあるということです。
なぜか同じ時期によく似た案件が入ることが本当に多いです。
また、同じ時期に同じ姓の方の帰化申請などの依頼案件が重なることも多いです。
帰化申請と同時案件と、帰化申請から30年も経過した案件の違いこそあれ、今日は父母欄の氏名についての案件が重なりました。
帰化後の日本の戸籍で、父の名前や母の名前を日本名に変えたいという願いを特別な手続きでかなえる為の申請です。
もともと、申請支援センターに依頼がある戸籍父母欄の氏名についての案件は、帰化申請に比べれは、年間にそれほどあるものではありません。
法務局への世の中の申請数自体が、大阪本局管轄の帰化申請数が年間に1000~1300件程度あるのに比べて、例えば「帰化後の」戸籍での父母欄の氏名訂正が同じ大阪本局管轄内の全市区町村全体で「年間にほんの数件」といったレベルであるからです。
それが、同じ日に複数、市井のいち行政書士事務所へ話があるのは、確率的な偏りがあるといわざるを得ません。
戸籍父母欄の氏名認定の話は下記の参考リンクをご参照いただくとして、双方の話に関係する大事な話が「転籍」に関する間違いでした。
朝にあった話は帰化申請をする際に「通称名」を父母欄に載せる事はできないか、という行政書士さんからのお電話でした。帰化後の戸籍に記載できるのは「本名」のみであるため、日本風の本名を持っていた「本人」のみが可能性を残すだけです。また、条件はそれだけではなく認定される夢をつないだつもりが最終的に法務大臣に認められなかったケースも当方からの申請の中にもあります。「通称名を」なんて言葉が出てきた時点で行政書士として他人様の帰化申請を受任する資格はないところですが、ぐっとこらえて少し話を聞いていましたら、聞きかじりの知識で既に依頼者に転籍をすすめていると、いとも簡単におっしゃるもので、おせっかいとは存じつつ、あまり何も考えずに転籍をすすめちゃいけません、というお説教をしてしまいました。年配の、人生の先輩ではいらっしゃるのですが、開業されて間もないことも存じておりましたので、過ちをおこされては依頼者の方も気の毒ですので、少しきつく申し上げてしまいました。
ちょうど晩にお越しになられた依頼者の方は、父母が帰化されて長年経った後に祖父母氏名の訂正を行ってから結婚話を進めたいという案件でありました。
本来、父母は既に帰化をされているわけですので、結婚される方の父母欄には日本の名前が入っているものですから、祖父母までの氏認定までしなくとも、何とかできる道も残されていたのですが、詳しい状況は申し上げられませんが、親御さんご自身が娘さんを想う親心から何の意味もない転籍を行ってしまわれたために、その道も断たれてしまっていて、一昨日の申請支援センターの相談会の際に涙を流されていたのです。
その後、一両日、親御さんとじっくり相談をされ、帰化申請よりもある意味大変で費用も掛かるにもかかわらす、未来の夫との幸せな人生のために、帰化後の父母双方の氏認定(つまり帰化申請の一部やり直し)を行うことを決断され、晩にお越しになられたのです。
夕方の案件で再訪されるお電話が入ったのは午後の事だったので朝の時点では予定していませんでした。と申しますよりも、土曜日にお話しした際には「戸籍の事なんか気にせずに、気楽に暮らしていきなはれ。」と申し上げてお別れしておりましたので、高い費用を掛けてご依頼になられるとは思っていませんでした。
しかし、意味の無い転籍(さらには転籍前に既に帰化事項は無かった)によって、涙を飲まざるを得ない悲しい状況となられていた、おとといのその相談が頭に残っていたために、朝の行政書士さんは、少しとばっちりをくらった格好となりました。
いずれにしても、「帰化事項が消える」とか「帰化事項が残る」とか、そんな次元の低い話がインターネット上に氾濫して、さらにそれを読んで無意味な転籍を行う一般の人が出てきたり、さらには、行政書士までが同じレベルの話を依頼者に勧めるような現状にどこかで歯止めをかけないといけない事と存じます。
帰化事項は、勲章にしたらよいです。
ただし、何らかの悲しい事情があって、帰化をした事をどうしても隠さなければならないのであれば、計画を持って「徹底的に」しなければ意味がありません。
そして、今日の依頼者の方にも、徹底的に行ってさえ、人生の最後まで(あるいはその先まで)隠すことはできないということを、隠せなかった時の対処法とともに、最後に申し上げておきました。
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参考リンク:
帰化申請時の創氏改名による父母欄の氏名の認定
提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」