帰化申請をはじめとして長く在日韓国人の方のお世話をさせていただいてきた中で、今回の在日外国人の通称名変更禁止は、本当に驚いた大事件でした。まさかと思っていたことが現実となったのです。
先日、平成26年1月27日に法務省のホームページに平成25年11月15日付の総務省自治行政局外国人住民基本台帳室長通知が掲載されました。
今回の通知は、在日外国人の通称変更禁止をはじめとした、住民基本台帳事務における通称に関する取り扱いの厳格化に関する政府の確たる意思表示でした。
以前から、外国人の方の通称(通名、通称名などとよぶこともありますが、正式名称は「通称」です)については、借金に密接に関係する問題点やひいては犯罪の温床となる懸念があったため、「近々通称が禁止される」などといった噂が絶えませんでした。
とくにインターネット上の掲示板サイトなどで、国粋主義的な考え方の人々などの意見や喧伝として顕著だったように感じます。
しかしながら、一方で、戦争中、戦後の内外の戸籍と多く接し、通称の存在理由も十分に理解しているつもりでありましたから、「通称」については不可侵の領域にあるような錯覚を覚え、また、だいいち通称などという制度があること自体全く知らない日本人がほとんどであるという状況の中で、通称制度の問題点が議論されること自体、遠い未来のことだと思っていました。
実際に私自身も、ずっと昔に帰化申請業務に携わるようになる前には、高校時代の友人から「俺、在日やねん。もうひとつの名前があるねん。」と打ち明けられた時にも、話を聞いていて、なんか苦労してるねんな、くらいのことしか感じなかったほどなので、通称とか言われても今一つピンとこなかったし、「在日」という言葉自体知りませんでした。
気の遠くなるほどの帰化申請を経験し、私自身が、在日の方よりも在日韓国人の方について詳しくなってしまった今でも、一般の日本人は、そんな感覚だと思っていました。
ですから、インターネットで「通名禁止が現実になる」とか読んでも、まあ、意図的なくだらないプロパガンダだと、笑い飛ばしていたのです。
しかし、安倍政権の今回の「在日外国人の通称の原則変更禁止」の通達には、帰化申請の専門家として、本当に心から驚きました。
すでに禁止されてしまった今だから言えますが、実際のところ、これまでは外国人の方の通称の変更は、驚くほど簡単な手続きで、実現できていました。
氏名の変更をするには裁判所の許可を得なければならない日本人が聞いたら、激怒することだったことでしょうが、外国人登録法があった時代には、自分の家の表札に「変えたい新しい名前」を書いて、自分宛に郵便でも送って、それが届けば、消印のある封筒や葉書を(今は無き)市区町村の外国人登録課に持参するだけで、ほとんどの場合、外国人登録上の通名を変更することが可能だったのです。
しかしながら、今後は通称の変更はできなくなりました。
また、郵便などのような「自分の意思により作成したと思われる書類」は、永年使用を裏付ける資料として初めての登録をする際であっても、一切受け付けられなくなりました。
日本人が氏名を変える時に幾つかある手段以外では、帰化申請のみが在日外国人が氏名を簡単に変えることのできる唯一の手段となったのです。
在留制度が改正された平成24年7月の際に「通称が使えなくなるから帰化したい」と電話を掛けてこられた何人かの在日外国人の方に、「そのようなことは、まずありませんよ。」と笑って答えていましたが、韓国総領事館においても通称記載が断られる状況となってきたことも考え合わせれば、現在の流れからすると、通名の廃止すら現実味を帯びてきたのかもしれません。
本当に驚きです。
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参考リンク:韓国人の帰化申請
提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」