性同一性障害の方の帰化申請その9

 性別変更父からの嫡出子出生届出を認めるべきと感じるもうひとつの理由は、日本は父子関係については届出主義であることです。

 日本だけでなく韓国も届出主義の国です。そして最も多い韓国籍の特別永住者の帰化申請において、この届出のために申請が難航することがよくあります。
 韓国への届出上の父と日本への届出上の父が違う場合、日本にのみ届出がなされているがその父が真実の父でない場合、様々な間違った届出がなされているケースがあり、帰化申請後の日本の戸籍を作成し父を認定する際に、この間違った届出が大きなハードルとして立ちはだかる案件も非常に多いのです。

 このような案件では、間違った父との関係を親子関係不存在確認の訴えにより切り離さない限りは絶対に帰化申請は受付されません。
 いくら状況や、様々な証拠物から、真実が明白であったとしても、その証拠物を添付したとしても帰化申請は受け付けられません。DNA鑑定をつけてもだめです。
 それらの証拠により裁判所で親子関係の不存在確認を勝ち取り、確定した裁判書(さいばんがき)を添付してはじめて、父でないと認められるのです。

 中国などの事実主義の国でなく、この日本という父子関係につき届出主義を選択している国において、出生届出はそれだけの重みを持っており、届出が受け付けられた以上は、裁判所によって切り離されない限りは、正式な親子関係が続くということです。
 
 ですから、確認の利益がある者から訴えられればすぐに切り離されてしまう父子関係である一方で、誰も訴えなければ、正式に親子でいられるという考え方もできることでしょう。
 そして、万が一の時には裁判所の判断にまかせるということです。

 また、裁判に至ることとなっても、父子関係を切られてしまう可能性は、まったくの100%というわけでないかもしれません。
 過去のいくつかの帰化申請の為に弁護士を立てて争ってきた中で感じることは親子関係の判断は決してDNAが全てではないということです。むしろ、申し立ての内容が虚偽でなく、大きく被害を被る人が居ない案件あるいは被害を被る人が賛成している案件であれば、できるだけ親族全員が幸せになる方向で審議されていく傾向を感じるほどです。訴えの相手や検察官がよほどDNAにこだわることがなければ、裁判上DNA鑑定を要求されることもありません。
 大岡裁判の希望も、わずかながら残ることでしょう。

 いずれにしても、性別変更父との嫡出子養子縁組の法的利益を認め、嫡出子出生届出との同時養子縁組届出を認めることで、裁判の結果を気にしないでよい世の中になると存じます。

性同一性障害の方の帰化申請その1
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提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」