性同一性障害の方の帰化申請その3

 なぜ、「性別変更後夫婦の」第三者精子提供子の嫡出子出生を容認して良いのか?

 前回まで「性同一性障害(GID)の方の夫婦の」と書いてきましたが、この方が正しいですね。この事件に関するほとんどの記事の題名が「性同一性障害の男性が・・・」で始まっていますが、ご当人はフィジカル上も、法律上も男性となっていますので、現在はもうGIDではありません。普通の男性です。(記事自体の中ではきちんと理解し正しく表記されています。)話題にすることで、世の中の利益としたいのか、自己の利益としたいのか、その両方なのかは別として、私も、記者の方も反省すべきところでしょう。

 いずれにしても、なぜ嫡出子出生を容認して良いのか?ということですが、では、どうして認めないと法務省は言っているのか?

 毎日jpの表現では(以下「」内引用)「小川敏夫法相は27日、閣議後の記者会見で「夫婦間の子供ではないと客観的に明らかな場合は、受理しないのが今の扱い」と述べた上で・・・」としています。

 現在は法的に”受理”という概念はないので(依然、職場内では受理伺いなどの言葉はアンダーグラウンドに残っていますが)”受付”というのが正しく、法務大臣が本当に「受理しないのが」とおっしゃったのかは疑問が残りますが、要点は「夫婦間の(遺伝学上の)実子ではないことがはっきりとしていれば嫡出子と認められない」としたことです。

 ところで、今回のような性別変更の有無に関らず、第三者精子提供人工授精子の嫡出子としての取り扱いは下記のようです。(注:理解しやすいように、過度に整理しています)

・”夫の承諾を得て”、妻が第三者の精子提供を受けたとき
 →「嫡出推定の及ぶ嫡出子」であり法律上の夫婦である限りは、夫からは嫡出否認できない。

・”夫の承諾を得ずに”、妻が第三者の精子提供を受けたとき
 →夫が嫡出否認できる。

 これだけを見ると、夫に嫡出否認をする意思自体なければ、全て嫡出子であるということで、うまく収まるではないか、という話ですが、「嫡出推定の及ぶ嫡出子」という部分が大事な概念であり、法務大臣の「夫婦間の子供ではないと客観的に明らかな場合」という言葉につながります。

 要は、性別変更をしていない、もとから男性である夫の場合、無精子症などのケースで自然受精できる可能性が0に近いような状況であったとしても(「無精子症」という診断を受けたからといっても子供を授かる確率はまったくの0ではありませんから)男である以上は0であると決めつけるものでものなく、夫婦である限りはふたりの遺伝学上の子でないと決めつけるまでには至らないので「嫡出推定の及ぶ嫡出子」といえるが、性別変更をした夫については「推定の及びようがない」ので嫡出子出生にはできないという理屈です。この推定の及びようがない子のことを「推定の及ばない子」といいます。

 ここからが非常に大事な部分ですが、長くなりますので、次回に。

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提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」