性同一性障害の方の帰化申請その4

 前回は、「推定の及ばない子」を嫡出子出生とすることはできない、というところまで書きました。

 この「嫡出推定の及ぶ嫡出子」なのか「嫡出推定の及ばない子」なのかということは大事な概念で、例えば、夫が収監されている間に生まれた子供は論理的に夫の子供であることはないので、夫は嫡出否認できる状況にありますし、子供にとっても収監中の男の子供ではないと、親子関係不存在確認の訴えを起こすことも可能なわけです。

 ということは、嫡出届出を受け付けたところで、訴えを起こされればすぐに覆ってしまうわけですから、届出時に自治体の戸籍課職員も法務局も慎重にならざるを得ないのです。届出時に自治体職員が、収監など親となりえない事実に気付き、確実に父親率が0%ということであれば受付されないことでしょう。
 それが推定の及ばない子は嫡出出生届出を受け付けられない、という言葉の意味するところです。

 ところが、推定の及ばない子の嫡出出生届出を容認するということになれば、収監時の夫の子供などで親でない事実がはっきりしているような場合でも受付をする必要が出てきますし、収監というケースに限らず過去の歴史の中で推定が及ばない為に涙を流してきた先例は何だったんだろうということになります。また、仮に法を改正して「推定の及ばない子」であっても嫡出子として「みなす」といったところまで行ってしまえば、遺伝学上の父以外の父の子となることを拒否する権利を子供が失うことになります。

 そして、「遺伝学上の父ではないことがはっきりしていて、すぐに覆すことのできる」嫡出子出生届の受け付けを可能とすることの一番の問題点は、他の兄弟(それは養子縁組による正式な嫡出子身分を得た者も含みます)などとの相続上の争いを無駄に招きかねないことなのです。

 次回は、実際に非常に高い確率で起こり得るケースを検証してみましょう。

性同一性障害の方の帰化申請その1
性同一性障害の方の帰化申請その2
性同一性障害の方の帰化申請その3
性同一性障害の方の帰化申請その4
性同一性障害の方の帰化申請その5
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性同一性障害の方の帰化申請その7
性同一性障害の方の帰化申請その8
性同一性障害の方の帰化申請その9

 

 

提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」