性同一性障害の方の帰化申請その6

 今回のような嫡出子出生届出を認めることの問題点は、決して、前回までに書いたような相続などを前提とした身分関係の法律上の不安定さだけではないのですが、実は、他の子供との間の第一順位間のみでの争いは、平成20年の法改正前にはありえないことでありました。

 成立した当初の「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下便宜的にGID法と呼びましょう)」においては、性別変更が認められる条件のひとつに、もともとは「現に子がいないこと(生存する子がいないこと)」という条件があったからです。

 しかしながら、平成20年6月に「未成年の子がいないこと」という条件に改正されたために、嫡出子出生が認められた場合に前回書いたような異父(母)きょうだい間の争いが高い確率で起こり得る状況が生まれました。

 ただし、もし改正されていなかったとしても、依然、第二順位である親や、第三順位となるきょうだいから、親子関係不存在確認の訴えを起こされる可能性は、もともとあったわけです。

 今後の嫡出子認定のゆくえは非常に不明瞭です。はっきり言って予測できません。

 そして、申請支援センターは、筆で世の中を変えるのが仕事のジャーナリストでも、法律を変えるのが仕事の政治家でも、争いによって依頼者の利益を勝ち取る弁護士でもなく、行政書士事務所です。

 最新の動きの結果を見定めた上で、その時点で世の中に存在するどの届出を使ってどのような申請をすることが依頼者や相談者にとって最適であるのか、様々な選択肢の中でメリット・デメリットも理解してもらった上でその個人にとって一番長く大きな幸せにつながるかを判断させる力を持っていることが必要条件であり十分条件です。それ以上も、それ以下もありません。

 今のところ、この流れの結果は確定してはいませんが、どんな流れとなっても、現時点で私が相談者に行うアドバイスは、まず、少なくとも精子提供者が父にならない父欄空欄の出生届と「養子縁組届」か「特別養子縁組届」の同時提出することをお勧めします(後記:なんともタイミングの良い事に、1/30に性別変更された方と別件で打ち合わせをする機会があり、ヒントとして、実際にこのお話をいたしました。しかし、最終的に決断するのは彼自身です)。もちろん、心の問題の対処についても、十分話し合った上で。

性同一性障害の方の帰化申請その1
性同一性障害の方の帰化申請その2
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性同一性障害の方の帰化申請その6
性同一性障害の方の帰化申請その7
性同一性障害の方の帰化申請その8
性同一性障害の方の帰化申請その9

 

 

提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」