帰化申請の添付書類だけを見ると、会社等を経営されている法人役員も、商店や工場等を自営で経営されている個人事業主も、多少の違いこそあれ、帰化受付時に提出すべき書類はほとんど変わりません。
このことから、そこそこの帰化申請数を経験している行政書士でも「自営業者の帰化申請も法人役員の帰化申請も大差無いんじゃないか」と勘違いしている事さえあります。
他人事のような物言いをしましたが、私も100件200件と帰化の経験を徐々に積んでいた頃は、そのような気持ちでいたこともありました。帰化条件該当性がぎりぎりの案件を悩み抜きながらサポートしている中で少しずつ発見があり力が着いていきます。
最近に親族の紹介をいただくために数年前に許可になった案件の許可者の方がお越しになられました。沢山の申請をさせていただいているので、少し時間が経つと帰化申請の内容はほとんど忘れていますので、ご本人のお持ちになった(私がお渡しした)資料を見せてもらいました。
こちらは法人を経営されていたご家庭の帰化申請だったのですが、特に財務諸表の内容を見て、まあ良く許可になったものだと、今更ながらにあらためて自分で驚きました。
この財務内容で帰化が通るんだ、と。
ただ、私はかなり気が小さい方なので、悪い経営者、というか感覚の麻痺した方から見れば「このくらい当たり前や、良くある話や」というレベルなのかもしれません。しかし、法務省や法務局の職員の感覚には、私の感じ方の方が近いと思います。
だからこそ、今後に事業が行き詰まらないということを証明する為の資料作りや論理武装に苦労した思い出が段々甦って来ました。
しかし、何れにしてもその申請が許可になった一番のポイントは「法人」であったことにあります。
実際、財政面ではずっと安定していた個人事業主の帰化申請が、受付後の急激な経営上の変化のために取り下げを余儀なくさせられたという案件を目の当たりにしたこともあります。
一方で、財務(生計条件)上は、個人事業主より遥かに有利な法人役員の帰化申請ですが、法人として果たさねばならない義務が増えますので、素行条件上は安心していられません。
「経営者」と、一口に言っても、帰化申請上で注意するポイントは全く違います。
真面目で、安定した経営をなさっている上では、何の変わりも無いようなものですが、経営者は様々な事情を乗り越えて走り続けているわけですから、一筋縄で括れるような簡単な案件は現実には存在しないのです。