外交問題発生時の傾向に見える帰化の動機

 尖閣諸島問題や東北大震災時の帰化申請受任数の落ち込みも昨年度あたりから回復して参り、今年の帰化申請は以前と同じ程度まで持ち直してきました。
 大阪法務局の国籍相談室でも、本来は比較的閑散期である7月8月も普段と変わりなく、というよりもむしろ、普段以上に毎日混んでいる気がいたします。
 申請支援センターの帰化申請相談会も6月頃から閑古鳥が鳴き始めるところですが、もう8月だというのに相談が途切れることなく続いて来ました。
 お盆を過ぎると秋の帰化申請相談のピークが始まりますから、今年は休憩している間も有りませんので、本当に嬉しい悲鳴です。

 しかし、冒頭にも申し上げた通り、東北大震災の後や、尖閣諸島をはじめとする外交問題が発生した際には、在留外国人の方の国籍や在留資格によっては、帰化申請需要がピタリと止まった事もありました。

 一方で、外交問題が発生しても、全く変わりなく、帰化需要がある国・在留資格もあります。
 (日本での登録上)韓国・朝鮮籍となっている特別永住者や、生来の中国人2世の方などです。

 思うに、これらの方々はずっと日本人の同級生と机を並べて育ってきていますから、良くも悪くも元々「日本人魂」を持っている人です。
 ですから、これらの人々が帰化を決意されたときの動機というのは、「心が日本人なので、国籍も日本人にならせていただきたい」と極めて単純な動機です。

 ですから、例えば、竹島問題で韓国との外交がギクシャクしようと特に何の感慨もないので、帰化したい気持ちに何の変わりも揺らぎもありません。

 ところが、東北大震災で帰化を躊躇ったり、尖閣問題で今後の様子を伺った外国人の方の、日本に帰化したかった動機というのは分析するまでもなく「『良い日本国』に帰化して幸福を享受したい」という打算です。

 帰化の動機を聞いていると「街が美しい日本が好き」とか「日本の食事がおいしい」とか「日本人のマナーの良さに感服している」とか、僕達日本人には一見嬉しい美辞麗句が並びます。
 
 しかし、裏を返せば、街が汚ければ好きじゃないだろうし、食事がまずければ帰化しないと言うことです。全ては打算に過ぎない。

 打算、は決して悪くはありません。
 現代社会を乗り切っていく日本人像として、計算高い、クレバーな社会人が求められることもあるでしょう。
 僕の回りにいる出世している奴等はみんな、計算高い、クレバーなヤツばかりです。

 ただ、クレバーなだけでなく、信用を持っています。

 人を信じ、自分も信じてもらう。

 相手が失敗しても信じた限りは裏切らない。
 周囲の状況や、些細な出来事で、右往左往しない。

 それが島国日本人村社会です。

 そこが理解できなければ、国籍を取得しても日本人になれないのでしょう。