今日一年半越しで再受任した台湾の方の帰化申請がようやく受付され「ほっ」

 昨年、帰化申請を受任し準備をしている際に、本国国籍を失う事にためらわれ、自己都合で申請を辞退された台湾人の方の帰化申請を夏に再受任しました。

 ちょうどお盆前後の申請支援センターが一番気が狂いそうに忙しい時期でしたので、もう顔見知りとなっている事もあって打合せの時期を待ってもらいあらためて書類内容等のレクチャーをして再始動いたしました。

 一般に台湾の方の帰化申請は申請受付に至るまでに時間が掛かる事が多いです。
 
 その理由のひとつが本国戸籍の数が多く一回の調査で全部集まる事が少ないからです。イメージ的には、日本に戸籍の附票の制度が無かったとして記憶等に便りながら生まれてから現在までの住民票を全て遡る作業を行うようなもんだと考えれば良いでしょう。

 以前の帰化申請では、台湾の戸籍制度が煩雑なものだから身分関係に支障がない程度に不足分があっても目をつぶって貰える事がありました。
 ただ、「身分関係に支障がない程度」というのが一般の人には判断できませんから、目をつぶって許してもらえるかもなどと中途半端に取得した台湾除籍を持って行くともちろんダメ出しを食らい韓国人の方にもまして何度も何度も法務局と本国との間を往復することになり結局全部集めるよりも手間や時間が掛かってしまう結果となるので、その見極めも行政書士の腕の見せどころのひとつでした。
 
 でも今年から、韓国人の帰化申請で同様の「身分関係に支障がない程度」の韓国除籍が判明するまでの法務局と領事館の往復に逆ギレする帰化申請者に法務局が愛想を尽かし、「じゃあ初めから全部集めてこい」方式になってしまったために、台湾人も全部集めたほうが無難な状況となり、ところが韓国のように一筋縄で集める訳には行かず、さて困ったというのが、平成27年度現在の台湾人帰化申請の現状です。

 台湾戸籍は、韓国のように家族関係登録簿制度に精通してさえいれば領事館でホイホイ書類が集められるというものでは無いからです。本当は台湾は韓国よりさらに進んでいて領事館どころか自宅でホイホイ書類が集められるのですが証明力は3ヶ月しかなく帰化申請書類が法務大臣の手元に届く頃には真偽が確かめられなくなることもあって現時点では戸政事務所印が求められます。少なくとも、大阪法務局での今日の時点での扱いはそうです。と申しますか、法務省も法務局も新制度へのはっきりした扱いを決めていません。法務省がはっきりとした扱いを決めていない中、変に帰化申請者に対して物分かり良く法務局が戸政事務所印の漏れた書類を受け付けて、本人が帰化申請不許可となってもいけないので勝手に扱いを決めるわけにも行きません。法務省は法務省で、日本国民の「命と同等に大事な」国民主権を守る仕事をしているわけで、海外の一国に過ぎない「とある国の身分関係登録制度」が微修正されたからといって、帰化申請という日本の国民主権の防衛線上にある手続きで、簡単に「ハイハイ。じゃ、簡素化の方向で。ほな。」なんて仕事をしていたら、「日本国民からオマエントコは、どこの国のための政府なんじゃい!」と言われて当然ですから、よっぽど国会側からの要請でもない限りは簡単に規定を緩めることなんてしちゃいけないわけです。

 そのあたりが、国境を守る行政の難しいところでしょう。
 僕も戦地に立っていると認識してこの申請に臨んでいます。
 僕のスキルは帰化申請しかないわけですから、戦いに破れれば僕も家族も死んでしまう訳ですから当然です。
 仕事に命を賭ける!という偉そうなものでないのですが、命を賭けざるを得ないし、当然に命が懸かっているのです。

 えーと、僕の命の話ではなく、台湾戸籍の話でした。

 今回の台湾戸籍認識してついては、韓国戸籍と同じルールを適用し、さらに婚姻事項が確認できるまで遡っていたら結構膨大なものになりました。
 量がどうのこうのよりも、飛び重なる本国との折衝に本人が「もう一度」折れそうになるのを勇気づけるのが今回の僕の一番重要で骨のおれる仕事となりました。
 韓国戸籍のように、僕が台湾戸籍取得も受任した方が良かったかも知れません。
 でも、本人が親兄弟に自分で頼むと言われるものを僕が立候補して請ける無理矢理受任するわけにも行きません。

 さらに、昨年帰化申請を辞退されて再受任するまでに、帰化条件に関わる大大事件が発生したのですが、法務局と何度か話し合いやっとのことで前に進むことになりました。
 「ああ、これでひとつ仕事を無くしたなあ」と心を決めて、真摯に法務局と向き合ったのがよかったです。一番前を走っていることを自負している手前、困っても誰にも聞けません。
 この年になって、いまだ勉強になった案件です。新しい知識も増えました。

 ま、いろいろありましたが、今日何のトラブルもなく受付されて、帰化申請者ご本人も、ご主人も、僕も、みんな笑顔になりました。