昨年、この帰化申請ブログの記事でも紹介した米国ニューヨーク出身の日本人で日本文学研究家・評論家のキーンドナルドさんが、浄瑠璃三味線奏者の上原誠己さんと養子縁組されたそうです。
養子縁組は法的に嫡出子の身分を得ることになるので、正真正銘の親子となられました。
(現在でもドナルド・キーンさんとして紹介されることが多いですが、日本人になられたので、キーンドナルドさんと「氏名」表記します。)
昨年記事を書きなぐった際には、キーンさんにご家族がいらっしゃるのかどうかが不明でしたが、あくまでもウェブ上の情報では独身を通して来られたとのことですので、これまでキーン家の日本戸籍上の跡継ぎがいらっしゃらなかった状況だったようです。
しかし、今回の養子縁組によって、上原誠己さんが日本国籍をお持ちである限り、キーン家は、キーン誠己さんに受け継がれていかれるで可能性が高いと存じます。キーンドナルドさんの帰化によるせっかくできた「家」が、安康に続いていくことは、日本にとっても非常にめでたいことです。
ネットに記述されている情報では縁組前の上原家は明治23年創業の新潟の酒蔵のようですから、おそらく上原誠己さんは日本国籍を持ってらっしゃるのではないかと考えられますので、氏をキーンとあらためられた可能性が高いと存じます。それでも民法上、上原さんがキーンさんにならない場合がわずかながらあります。
民法810条には「養子は、養親の氏を称する。」とあり、縁組した養子は養親の氏を名乗らなければなりません。
しかしながら、同条ただし書には「ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。」とあり、つまり、婚姻の際に妻の氏を名乗っている方については氏は変わらないのです。
わたしたちの日本国は「婚姻」ということを最も大事に考えているので、「婚姻」の際に夫婦となる者がいっしょうけんめい協議して決めた名前を、養子縁組による氏よりも優先しよう!というのがその立法趣旨です。
でもキーン家では心配ありません。これもネット上の情報ではありますが、とくに上原家に婿入りされたのでもないようです。
ところが、キーン家存続のことだけを大事ととるなら、もっと深刻に検討しておかなければならないことがあります。
それは、すでに養子に子供がいる場合です。
これから子供を産んで増やしていく場合には、自ずとその子供がキーン家の戸籍を承継していかれますが、既にいる子供はそうではないのです。
子の親が、誰かの養子となる場合は、子連れで結婚する場合と同じことになりますから、そのままでは、養子の子は、もとの氏をそのまま名乗ることになります。
家庭裁判所で「氏変更許可」を申し立ててから入籍ができるのであれば入籍届を、既婚者で入籍ができないなら氏の変更届を提出することになります。
入籍をする場合には「子の氏の変更許可申立書」のフォーマットで簡単に氏変更ができるのですが、これは入籍を前提に作成されているものですので、氏の変更届を出すだけの場合はやはり一般の申立書を使用することになるのでしょう。
いずれにしても、キーン誠己さんのお子さんの同意や協力に、キーン家代々の存亡がかかっているのです。
がんばれ、キーン家!未来のために。
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>帰化後の氏名として現在の氏名をそのまま使うことはできますか?/帰化申請Q&A
提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」