帰化申請者を指導できるパワーのある行政書士でないと!

 先日、大阪法務局に帰化申請の受付で依頼者と足を運んだ際に、民事行政部国籍課の相談室の待ち合いで、別の行政書士らしき?若いスーツ姿の人が、帰化申請者本人から叱り飛ばされている場面に遭遇しました。

 20代後半から30代くらいでしょうか、若いその黒いスーツ姿の人は、可愛そうにひたすら頭を下げて謝っています。

 その若い人に依頼したらしい家族は、狭い大阪法務局国籍課の待合室のソファーに、まあまあ待ち合いが混み始めているにも関わらず、席を詰めもせずだらだらと間隔を開けて陣取り、可愛そうに立たされたまま謝り続ける青年に、小言を言っているようでした。

 悪い性格でつい興味を持って聞き耳を立てておりましたところ「その行政書士と前にも帰化申請の受付に来たが前回は受け付けられず、仕切り直しとなり、今日2回目の出頭となった。家族みんなでの申請なので、この忙しい中、全員が時間を合わせるのはなかなか大変な事なので、専門家ならもっとピリッとして欲しい。楽に帰化申請を進めるために金を払っているのに意味がない!」と言う内容のお小言のようでした。

 まあ、依頼者側の言い分もわからないではないですが、仕切り直しと言うのはないこともないので、それだけで責めてあげるのは、その若い行政書士も可愛そうかなあ、と思います。ただ、前回の仕切り直しの理由が、古い戸籍の内容を充分に確認できていなかった、とか、素行や生計に関する疎明資料が足りなかったと言うような内容であれば、この若い人の「勉強不足」ですので罵倒されても仕方ないのですが、仕切り直しの理由が分からない以上、私からもさらに罵倒するのは控えておきましょう(笑)。

 ただ、一番の問題は、依頼者とこの若者の人間関係を拝見していて「帰化申請者をコントロールする力が”明かに”欠けている」と言うことです。

 終止行政書士のペースでご指導申し上げながら、帰化申請者本人を帰化許可に導いて上げられるパワーが必要です。
 この青年には、残念ながらそれが備わっていません。
 
 狭い待合室が込んで来ているのにボーッとしている馬鹿親子に「ちょっと、席を詰めましょう」と声を掛ける勇気もなければ、「日本国民にとって命と同じ価値である日本国籍を”金を払って楽に”取れる」という勘違いを正す責任感も持ち合わせておられないように感じました。日本国籍だけでなく、中国国籍も、韓国国籍も、英国籍も、その国の国民の命です。

 このような力の無さでは、恐らく申請者ご本人が「できれば触れられたくない秘匿している過去や現在の問題点」をきちんと聴取できているはずがありませんから、受付がなされたところで帰化申請の審査が進んでいく中で発覚し、その重要度や対応の仕方により取り下げや不許可となるリスクを多いに含んだ帰化申請となっていることでしょう。

 私も申請書や翻訳にに間違いがあってご本人から指摘され、謝ることなんてしょっちゅうですが、根幹となる部分の作戦ミスでは無いので、きちんと修復すれば帰化申請にはほとんど影響ありません。

 現実に、同じ法務局の待ち合いで申請書の間違いが発見され、すぐ隣の申請支援センターの事務室に飛んで帰った事もあります。そして、バツ悪く頭を掻きながら、それでも「席を詰めなはれ」と依頼者家族を叱った記憶があります。

 要するに、初回相談時から、帰化申請者と口喧嘩してでも全てを話し合える上下関係のない人間関係を構築することが、ひいては申請者本人を救うことになるのです。

 ペコペコマンの行政書士では、もうそれだけで、少なくとも帰化申請業務においては失格です。