大韓民国民法の改正
韓国の国会で2011年3月7日(平成23年3月7日)に改正された新しい大韓民国民法が、来月2013年7月1日(平成25年7月1日)に施行されます。
この改正大韓民国民法においては、第4条で決められた成年(成人年齢)が、日本と同じ「20歳」から「19歳」に引き下げられます。
●改正前大韓民国民法
제4조 (성년기) 만20세로 성년이 된다.http://ko.wikisource.org/wiki/%EB%8C%80%ED%95%9C%EB%AF%BC%EA%B5%AD_%EB%AF%BC%EB%B2%95●改正後大韓民国民法
제4조(성년) 사람은 19세로 성년에 이르게 된다.http://ko.wikisource.org/wiki/%EB%8C%80%ED%95%9C%EB%AF%BC%EA%B5%AD_%EB%AF%BC%EB%B2%95_(%EC%A0%9C10645%ED%98%B8)条文の題名は「成年期」という表現から、日本と同じ「成年」という表現に代わっていますね。
この大韓民国民法の改正で、1993年7月2日〜12月31日及び1994年1月1日〜7月1日生まれの人は2013年7月1日に一斉に成人となります。本来は自分の誕生日に成人するのですが、2013年7月1日までは旧民法の成年である20歳までは成人にあたらないからです。
もちろん、1994年7月1日以降に19歳の誕生日を迎える人は原則通り自分の誕生日に成人となります。
今回の韓国民法改正は、成人年齢の引き下げだけでなく、制限能力者に関しての規定が様々に見直されたものではありますが、以下では、成年に関してのみ、日本の帰化申請制度との関連を考察いたします。
日本の国籍法との関係
日本の国籍法において、成人年齢が影響を与えそうな条文として、どなたもまず思い浮かぶのは。もちろん国籍法第5条2項でしょう。
帰化申請の条件のひとつ、能力条件の規定です。
しかし、帰化申請における能力条件は、「20歳以上で」あることを具体的に定め、さらに本国法において「行為能力を有すること」を追加規定しているのであり、20歳以下で成年となる国の国民は、(日本における成人である)20歳になるまでは帰化申請できませんので、「20歳から19歳に」引き下げられた今回の韓国民法の改正は、国籍法第5条2項の条件上はなんら変わることはありません。
成人年齢が能力条件に影響する変化は、「20歳以下から20歳より上の成年に引き上げられる際」と、「20歳より上の成年が20歳以下に引き下げられる際」です。
ただし、今回の韓国民法改正では成年だけでなく、制限能力者に関する規定全般に変化があり、能力条件に直結する事柄ですから、実際には、ひとつひとつの事案においては、行政書士が帰化申請を受任する際には、能力条件を判断する上で、改正ポイントを個別に照らし合わせる必要があります。
次に、「認知された子の国籍取得の届出」について定めた国籍法第3条についてですが、こちらも外国の成年が変更になったところで影響はありません。
国籍法第3条においても法文上の年齢条件が「未成年であること」と決められているのではなく「二十歳未満のもの」と具体的な実年齢で決められていますので本国法上での成人年齢は関係がないからです。
あと、国籍法第7条に関する事ですが、もし婚姻適齢が「成人は婚姻できる」とか「未成年は婚姻できない」と決められている国であれば、日本人の配偶者となること自体に影響するので第7条による簡易帰化と関係してくるのですが、大韓民国民法第807条において「満18歳になった者は婚姻することができる」とこれも具体的な実年齢で定められていますのでなんら影響はありません。
なお、韓国での婚姻適齢期は、2007年12月21日に改正されるまでの韓国民法では、「男子満18歳、女子満16歳に達したときは婚姻することができる」と定められていたものが男女ともに満18歳が婚姻適齢とされています。
ただ、国籍法第3条においても、国籍法第5条においても、年齢に関する条件上は今回の韓国民法改正とは一見、全然関係ないように読めますが、もうひとつ考えておかなければならないのは、親権の問題です。
けだし帰化申請においても認知された子の国籍取得の届出においても条件上は満たされていても親権の問題で実質的に申請できなくなることが非常によくあるからです。帰化申請を多く扱っていると、このことで苦労する案件がたびたび出てきます。
しかしながら、親権の問題が深刻な影響を及ぼすのは15才未満の申請者の場合ですので、本国法における成年が15才未満に引き下げられるようなことのない限りは、あまり気にする必要はないでしょう。
今回の大韓民国民法における成年の引き下げが確実に影響してくる条文はひとつだけあります。
それは国籍法第8条です。
国籍法第8条に関係する案件で、過去に、成年が日本と違う中国籍の方の申請において、当方にお越しになられる前に、この条文により帰化申請が受け付けられず(ご本人は「取り下げさせられた」と主張されていたのですが、正しくは不受理でした)、当方がリカバリー申請をさせていただいた事件がありました。
第8条を使う場合は、おのずと在留資格も関係してきますから、条件判断の際に状況を整理して慎重に行う必要があります。法務局の相談員さえ、よく勘違いすることがあるほどです。
なぜ第8条に在留資格が関係するのかがわからない人は、帰化条件の基本である第5条を全く理解していないということですから、帰化申請を扱う行政書士として失格です。もう少し研究を深めてからでないと帰化申請を扱ってはいけません。
実際に先のリカバリー案件でも、不受理になった申請者の方が「法務局に対して行政訴訟を起こしたい!」とえらい剣幕で当方に乗り込んで来られて、「裁判するなら弁護士事務所さんにどうぞ!」と追い返したところ、実際に弁護士に相談に行かれた後で、もういちど当方に見えられて、このまま裁判を始めるべきか、再申請するべきかを相談されたところから始まりました。訴訟の相談に行った弁護士さんが六法を指し示しながら説明されたのに対して、私がすべてソラで即答していったのを気に入っていただき再申請の道を選ばれたのです。もったい付けの為に法律書を取り出したものが、本人の目にはカンニングと映ったのでしょう。申請者は今ではすでに日本人として結婚もされ幸せに暮らされています。
最近は、六法全書だけでなく、パソコンをカンニングペーパーにしている偽物の専門家も多くなりました。相談時や、講演時に、パソコンを手元に置いている人は、自信のなさの表れです。依頼する方も依頼される方も、ご注意を。
いずれにしても、あとひと月も経たない平成25年7月1日からは、韓国も中国と同じように(成人年齢は19歳と18歳と差はありますが)、日本よりも若く成人する国となるため、今後、韓国人の方が8条申請をする際には、中国人の方と同様に気をつけなければならないことでしょう。
先のリカバリー申請の事件については、いつか詳しく書きましょう。
参考リンク:
帰化申請の条件
提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」