帰化申請版マーフィーの法則の種明かし

 帰化申請では「最後に取得する書類の中で問題は起こる」というマーフィーの法則があることを昨日書きました。
 帰化を専門に扱う行政書士の経験則と言っても構いません。

 マーフィーの法則では例えば「ピーナッツトーストは、必ずペーストを塗った側を下にして落ちる」といった”なぜか”不幸なベクトルを持った理不尽感が漂っています。でも、マーフィーの法則もよくよく考えてみれば必然的な理由が存在します。

 ピーナッツトーストでは、①直前にペースト側が上を向いている状態からトラブルで落っことすわけですからひっくり返れば裏を向く確率が高くて当然、②ペーストが塗布された重い面が下を向くのが当然、などの理由が存在するそうです。

帰化申請版マーフィーの法則も、実は理不尽な事ではなく、ある程度蓋然性のある法則なのです。
「最後に取得する書類の中で問題は起こる」理由は次の通りです。

1.税務書類をはじめとした「お金に関わる書類」は比較的最後に集める事が多いから。

 在勤給与証明書や税務関係書類については直近の内容から遡って提出するため、月替わりや年度替わりによって提出する書類が変わってきます。このため、本国や本邦内の身分関係に関する書類の目処が着いてからお金関係の書類に手を付け始めることが多いので、どうしても後回しになります。

2.「お金に関わる書類」は帰化条件に直結する書類であるから。

 一方で「お金に関わる書類」は生計条件と素行条件の双方の帰化条件に直結する書類であり、問題が含まれていることが多いです。

3.全体的に真面目な方の申請では、安心しきってしまっていること。

 いくら身分関係が先、お金関係が後、というセオリーがあっても、行政書士もプロですから聴取の段階で後で問題が出そうな案件というのはある程度は察することができますから、お金関係を先に調査していく場合もよくあります。しかし、サラリーマンで特に頻繁に転職をされていない方で正直そうな方の場合には、安心しきって、セオリー通りお金関係を後回しにすることがほとんどです。
 このようなケースで、正直な本人も自覚していない問題が添付書類から見えてくることがあるのです。

 このような時は信用しているからこそ、少しびっくりします。

4.(大阪では)帰化申請必要書類一覧表で後半にお金に関する書類が書かれていること。

 本来、行政書士などの専門家には関係の無いことではあるかもしれませんが、一般の申請者の方にとっては、これもおおいに関係することでしょう。
 帰化申請で必要な書類の一覧表は、日本全国の各ブロック毎に似たフォーマットを決めていて、さらに各法務局や支局において独自の内容を作っています(稀に、独自の帰化申請必要書類一覧表を作成していない地方法務局もありますが・・・)。

 上述の通り、身分関係が先というセオリーがあり、また、全国版帰化申請の手引きに掲載された必要書類一覧表を参考に各法務局の一覧表が作られていることもあって、大抵、お金関係の証明書が後半に出てくることが多いです。セオリーに適っているので合理的なことだと存じます。

 このため、一般の人はやはり書かれたとおりに集めていかれるでしょうし、行政書士は一覧表などほとんど見ずに書類を集めていくものの、私の瞼を閉じた裏に格納しているJPGデータは、大阪法務局の帰化申請必要書類一覧表です。私も人の子、なんとなく後回しになるのは、そういう単純な部分にもあるのかもしれませんね。

 大阪の帰化申請必要書類一覧表でも、税務書類が登場するのはA3用紙を半分に折った裏面からです。
 素行条件上のびっくり度上位に食い込む不動産登記簿謄本などはほとんど最後です。

 種明かしは、そんなところですかねえ。

 いずれにしても、お会いしている中で勘付く場合はいいのですが、いたって真面目な方で一途に仕事をしている勤め人の世帯で本人にも自覚が無い場合には、気付くのが少し遅れることがあるので、注意しなければなりません。

 ただ、当センターに依頼されている案件では、色んな問題が発覚するのは、「全て」法務局に行く前ですから、もちろん、先に対応ができますので、「大変やったねぇ」という笑い話で済むことが多いです。
 実際には、中には笑い話で済まない状況の場合もあるのですが、そのような場合でも「洒落にならないくらい大変だった」が許可には漕ぎ着けられることがほとんどです。
 法務局で発覚するのとは、えらい違いですね。