帰化申請ではパスポートは国籍を証する書面となりえない

 外国において、また日本において、パスポート(旅券・護照)とは、日本のパスポート自体に「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。」と記載されているとおり、パスポートを所持する者の国籍が自国民である証明した上で、渡航国における保護を求める公文書です。
 その意味からは、パスポート(旅券・護照)は、立派な国籍証明書として、とくに外国においては、そう評価されています。

 しかしながら、帰化申請においては、法務省・法務局は一貫して、国籍法施行規則第2条3項中に規定される「現に有する国籍」につき、国籍法5条5項の条件を備えていることを証するに足りる書類として、原則は認めない取り扱いです。つまり、パスポートは帰化申請ではそれのみでは国籍証明書としてはとり扱われません。

 一方で、本国官憲に対して、国籍証明書の発行を求めた場合に、「パスポートがその役割を担っているので、それ以外には特に発行できない」といわれる場合がよくあり、本国と日本との認識の食い違いの狭間で帰化申請者が悩む場面が存在します。時には、申請者が「なんでパスポートを国籍証明書と認めないのか!」と法務局に文句を言い出すようなこともあり、これは帰化申請上、あまりよろしくありません。

 日本におけるパスポートの取り扱いは旅券法によって定められており、旅券の種類などについてはきちんと規定されているのですが、旅券そのものについての位置付けが不明確で、「国籍を証することを目的として交付される」などという定義がとくになされているわけではありません。
 さらに、二重国籍の容認とはまったく違う成り行きにより、帰化申請者が複数の国のパスポートを所持している場合も比較的多く、帰化申請上、パスポートを国籍証明書として認めてしまうと、混乱を招いてしまう事情もあります。

 いずれにしても、国籍証明書は、まずはパスポート(旅券・護照)以外で取得するよう努力するところから始めなければならないのです。

 

参考リンク:帰化申請の必要書類

提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」