認知された子の国籍取得の届出は、帰化申請と違って申請ではありませんから、もともと許可とか不許可という概念はありません。さらに、行政手続法制定後は受理という概念自体がありませんので、本来は義務付けられた官公庁への通知であるところの届出を行うと同時に権利義務が発生するのが建前です。
しかしながら、実際には認知された子の国籍取得の届出においても、審査はあります。法令に定められた「形式的」要件に適合するかどうかの審査が必要だからです。
そして、先日、書いたばかりの認知された子の国籍取得の届出の記事での案件で審査が通ったとの連絡が法務局からあったとの嬉しいご報告が依頼者よりありました。
受付から1週間のスピード通過です。
一般の任意認知案件では2,3ヶ月掛かることもありますが、裁判認知案件の認された子の国籍取得届出は慨して結果が早いです。
今回の受付時には法務局からは「2,3週間お待ちください」と言われており、それでも任意認知に比べて早いかなと思っていたのですが、結果としてはさらにその半分くらいで済みました。
昨年末に本人申請で断られ、春に私自身も折衝がうまく行かなかった時から、問題点ははっきりしていましたから、その部分をクリアできたので、審査すべき内容は明確だったこともあるでしょう。
この案件は、もともと、冒頭に書いた「形式的」要件が満たされていなかった案件でした。
もっと具体的に申し上げると、法定代理人として裁判認知による国籍法三条届出を希望していた母に、親権が欠けていたのです。
ASC申請支援センターに相談にお越しになられたのは、今年平成24年春だったのですが、法務局には要件を満たしていない事が知られている上、訴訟の相手(子供の父親)とはあらためて調整できる状況でもなく、また、あらたに訴訟を起こすとなると弁護士費用が相場として50万円前後以上は覚悟しないといけない中で、途方に暮れられていました。
さらには、法務局とのやり取りの中で、職員さんとの信頼関係が崩れておられたので、まずは、本人のおかれた環境を心の状況も含めて、法務局や本国官署に理解してもらうことと、届出に立ち向かう気力を全く失ってしまったご本人に勇気を与え続けるところから始めなければなりませんでした。
ただ、真面目な方であったので、何度も折衝を繰り返す中、いつしか法務局も韓国官署も(もちろん、法務局も韓国の官署もダメな部分はダメと譲ってくれませんが、気持ちの上では)味方になって行ってくれたのです。
さまざまな方面の方が前向きに協力してくれたおかげで、受付が不可能であった問題点をクリアすることができ、4月頃から動き始めて、8月のお盆になってやっと受付をされたのです。
私の感覚からすると、仕事量的にも心理的にも帰化申請の3倍くらい労力が掛かりました。しかし、その分、本当に達成感のある仕事でした。
今回は裁判認知案件だったので、書類の量自体は帰化申請の10分の1にも満たないくらいの薄いものですが、その薄い書類の内容を「正攻法で受理可能な内容に変える」ために掛けた多大な実労が報われたのです。
ほんとうに良い仕事をすることができました。
参考リンク:認知された子の日本国籍取得の届出
提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」