帰化申請専門家失格の日

 火曜に日付が変わってしまいましたが今日(月曜)は帰化申請で徳島法務局出張の日でした。

 帰りの高速バスが事故渋滞で長くかかり乗り物に弱い私はそれだけでフラフラだったのですが帰阪後ただちに単発依頼の韓国除籍謄本1冊を翻訳し終えて零時前後から一杯引っ掻けての帰化申請ブログの投稿です。目が回っているので書きながら寝てしまうかもしれません。

 往路のバスの中で「大阪では20分位で点検が済みそうな案件なのに2時間位書類内容を見せて欲しいとか言うてる」とか「段取り悪いのは帰化申請に慣れてないんとちゃうか」といった愚痴とも悪口ともつかん与太を書き綴りましたが、ボロクソにいい放てるのも自分が毎日真面目に慎重にまっとうな仕事を続けていてこそ、の話です。

 ところが、今日は帰化申請専門家の看板をおろそうかと思うような出来事がありました。

 普段、帰化の面接の直前には綿密な面接対策のアドバイスを行っているのですが、今日は元々私ひとりで書類点検に行く予定で法務局とも行政書士のみの訪問であることをシブシブ了解をもらっていたのですが、シブシブだった経緯があったもので本人にも「来れるようなら来たらどうですか」とお誘いし、真面目な申請者の方だったので直前に「合流します」ということになり、書類点検の当日に会ったときに簡単に打ち合わせをしたのでした。
 今日は面接でもないし、何一つ隠し事をする必要のない真面目な方で、さらに気に掛かる事項は事前に潰して法務局に堂々と見せられるように修復も済んでいたため、ご本人には簡単な心構えの説明の後に「くれぐれも嘘の無いようありのままに答えて下さい。」と付け加えました。

 ところが真面目過ぎる性格でいらっしゃる事が災いして、その言葉が過剰に本人を縛ったようです。

 本人の事前インタヴューが終わって私も招き入れられて、法務局担当の第一声が「本人にお兄さんがいる可能性があるのですね」でした。

 そんな大事な話、聞いてない。目が点になりました。
 本人が私に伝えていない事柄があったのです。
 もちろん、私も受任をする最初の頃に、何度も何度も「死亡した人も含めて、登録以外のきょうだいはいませんか?」と口酸っぱく聞いています。ところが、私への告白はなかった。

 それが、私の「正直にね」というアドバイスに触発されて、小さい子供の頃に聞いた覚えのある兄がいたかも知れないという噂話をひとりだけのインタヴュー時に急に思い出されたのです。

 いくらありのままにと言っても、事前に私に話したこともない事柄を法務局に対して述べるのはやめてくれ!と憤りは募ったのですが、これも皆、ひとえに私の力なさに起因するものです。

 普段、各地の法務局で他の行政書士が法務局と打ち合わせているのが待ち合い室に漏れ聞こえて来たり、受付時にトラブっているところを目撃したりした際に、とくに今回のような「身分関係に関する問題点」であったような日にゃ、「このド素人行政書士がっ!」と心中で思い、個人攻撃にならない程度にブログで悪口を書いたり、研修で悪い例として取り上げたりして、「帰化申請、辞めてまえっ!」とさんざん罵って参りました。

 私の一番の自慢であり、申請支援センターが他の帰化申請を扱っている事務所に圧倒的に勝っていると自負しているのは、ただひとつだけです。

 それこそが、依頼者からの事実聴取力なのです。

 本人が嘘をつこうが見抜き修正していく力、これが帰化申請で行政書士に求められるスキルです。

 しかし、それがなかった。

 依頼者は「黙っていて、ご免なさい」と何度も謝っていらっしゃいましたが、あくまで私の会話力の欠如です。

 幸い、即刻中国の御母堂に国際電話確認をしてもらったところ単なる「噂話」というか「堕胎との勘違い」であったようなので胸を撫で下ろしたのですが、法務局に対しては「すいませーん、勘違いでしたー」では済まない。
 今後、真摯で慎重な修復の動きが必要となります。
 
 いずれにしても、修復が済みご本人の申請が前に進みだすまでは、お客さんにも、ブログでも、帰化申請世界一の専門家のような顔をするのは控えることといたします。