取下げ案件のリカバリー帰化申請が帰化許可となりました

 今日は午前中に、早い実家の年末大掃除を済ませ(この大掃除では「窓拭き」ではなく、全ての窓を外して洗う、という「窓洗い」をするので大変なのです)、午後から帰化申請の打ち合わせなどで走り回って、自宅に帰宅すると、帰化申請の依頼者の方から荷物が届いていました。

帰化申請を行う法務局
法務局写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 

 時節柄、歳暮でもいただいたのかと開けてみると、ご丁寧にお手紙まで入れていただいており、帰化許可の御礼と言う事だったので、しまった!、とびっくりしました。

 しまった!、と言うのは、帰化許可のお知らせはこちらからする事を、僕の中での決まりごとにしているからです。
 お客さんに先を越されて、お礼を言われてしまうのは、僕の中では負けで、結構恥ずかしいのです。

 帰化許可は官報告示されるのですが、システム化できていない事務所では、毎日、官報を読んでチェックしたりしているわけで、もっと酷いところになると、それさえ怠っていて、法務局から本人に帰化許可の連絡が入った後で、依頼者から連絡を入るのを待っているところさえあります。官報告示の際のルールを知らないと手作業で官報をせっかく毎日読んでいても見逃す事が出てきます。実際、毎日官報チェックをしている依頼者の方でも1/4くらいの人が自分では見落としてらっしゃいます。

 うちは、僕が事務所に居さえすれば、毎日、ちゃんと帰化許可の状況が把握できるようになっていて、先週木曜までは漏れがない事が確実だったのですが、金曜は早朝から外回りで自宅から直行して、夜も打ち合わせが入っていたため事務所に寄らずに自宅に帰りました。所謂、「直行・直帰」というやつで、サラリーマンの場合にはちゃんとした会社なら上司から叱られる就業態度です(笑)。

 だから金曜は帰化許可のチェックはできていませんでしたが、一般の法務局の場合には、少数の特定の法務局を除いて、帰化許可当日に帰化許可の連絡をする事はしませんので、月曜日に事務所に出勤した瞬間にチェックができるわけですから、金曜分は翌週明けで十分なのです。

 どこの法務局でも、当日に許可を把握していますが、慣れた法務局は帰化許可の連絡を当日にはしません。連絡したところで、本人に渡す書類さえ揃っていない状況ですから、本人と間に何の事務的進展も実現できないからです。だから、どうせさらにもう一度本人と連絡を取らないといけない事態となり、一方で本人も許可になった事を聞いた手前そわそわしだしますし、人によってはフライングで法務局に色んな注文をしだすケースもあって、法務局の仕事の段取りがガタガタになってしまう事がよくあるのです。
 だから、大阪の本局のように帰化申請の数が多い法務局では、急いで連絡する事は「あえて」されていません。

 今回の方の法務局も実際にまだ連絡をしてきていませんでしたから、月曜となっても、僕が徒競走に勝利をおさめる、・・・はずでした。

 いずれにしても、許可されているとすれば金曜しかないので、まるで帰化の素人の行政書士のように、金曜の官報告示の記事を手作業で確認しましたところ、確かに告示がなされ帰化が許可となっていました。

 今回許可となられた方は、かなり帰化申請について勉強されておられて、数十件くらい帰化申請をしたことがあるレベルの行政書士よりはよほど帰化に精通されている方でした。
 そして、今回は官報告示を丁寧に確認されていたので、法務局からの帰化連絡は無かったけれども、自分で許可を発見されました。そして、早くもお礼の品まで既に送ってこられたのです。頭が下がります。
 帰化申請数の少ない地域の方なので、送って来て下さった地元の名産品をご紹介しただけで特定されてしまいますから(汗)割愛させていただきますが、高価なものをいただいて恐縮でございました。

 この帰化申請案件は、リカバリー案件でした。

 知らない方のために念のために書くと、リカバリー案件とは、いちど不許可や取り下げとなった帰化申請の再申請の事です。
 自分でやった案件のリカバリーもあれば、他の行政書士事務所が行って不許可や取り下げとなった案件のリカバリーもあり、もちろん、他の行政所事務所が行った案件の再申請の方が難易度があがります。
 また、一般的にリカバリー申請は3~5年以上待ってから申請する事がほとんどですが、前回の不許可や取り下げから再申請までの期間が短ければ短いほど難易度があがりますし、あまり短いと、法務局自体、色々と難色を示して受け付けてくれない事も多いです。

 でも、今回の許可は、他の行政書士さんがされた申請の、取り下げ後、半年程度の再申請で、あまり例がないことに、年度さえ変わっていない案件の、まあ半分ねじ込み気味の申請です。

 前回、結局取下げとなった申請も、担当されたのがなかなか真面目な良い行政書士さんだったようで、下手な申請をされたわけではなく、ご自身の行為に帰責する事で取り下げを余儀なくされたのですが、取り下げるべきかどうかの見極めも微妙だったようです。

 リカバリー案件とはいえ、真面目で生計も安定した模範的な帰化申請者の方であり、上述の通り、そこらへんの行政書士よりも帰化申請に精通されていらっしゃるので、今後の手続きについての電話をしました際に「あなたご自身でされても、許可になってますよ。」とお話申し上げましたところ、謙遜されて、僕のてがらと言う事にしてくださいました。

 もし、本当にてがらと呼べるものがあったとしたら、それは「今回の申請を、”ご本人も”、”法務局の職員さんも”、安心させながら、進めて行けた。」という、僕の面の皮の厚さだけだったのかもしれませんね。

 また、簡単な帰化案件でも許可まで1年くらい掛かっている平成28年の帰化行政の中で比較的早く許可になったのも、まあ、褒めてもらえるのかなとも思います。

 間違いなく言えることは、今回の方のように帰化申請の事を「よくわかっている」人ほど確実に帰化が許可となる為に信頼できる行政書士を探して依頼されて許可の確立をあげられますし、帰化の事が何にもわかっていない人ほど、自分の暮らしに自信満々で自己申請して行き詰ってしまわれるという事です。
 例えば、「俺はちゃんと税金も払ろて来てるよ」などと相談会でわざわざ豪語する人は、たいてい税金は払っているけれど正しく申告できていない事の方がむしろ多いくらいですね。
“自信満々の人ほど帰化できない”。このマーフィーの法則は凄まじいくらい当たります。

 いずれにしても、一昨日の許可は、帰化申請をよく知っておられる申請者の方が、なおかつ、素直に専門家の助力を求めたことの果実であったと言えましょう。