7月9日以降の帰化申請で使用頻度が激増した職務請求書ですが、職務請求の制度があって助かっていたんだと、気付くことがあります。
日本人の同棲者や、同棲していない日本人の婚約者と結婚をするにあたって、帰化申請を決断されご依頼をいただくのは非常によくある話です。
生まれてくる子供の国籍のことや、帰化後の戸籍がどうするか(あるいは帰化前の戸籍をどうするか)という具体的な設計図を描くことができない間は受任しちゃいけない案件です。帰化が許可になってずいぶんと時間が経ってから問題点に気が付き、青ざめる行政書士も少なくないかも知れません。
でも、よくあるパターンの帰化申請案件です。
このような結婚寸前の帰化申請案件では、既に婚姻届を提出しているかいないかに関わらず、同棲する相手や婚約者に関する書面も何種類も法務局から要求されます。
そのうちのひとつが、例えば、同棲する日本人の住民票です。
普段は行政書士の職務請求書を使用して請求をしており何の問題もなく交付されていましたので、「あ。同棲しているなら普通に取れるんだ。」と長年の間(笑)、勘違いしていました。
一年程前に、大阪市内の区役所を他の方の書類取得で訪れた際に、日本人と同棲している人の申請を思い出し、ついでに取得しておこうと職務請求書を探したら、事務所を出る際に鞄を変えたために、持参するのを忘れていたことがありました。
当事者の委任状は持っていたので、居住地と別の区役所だったので「委任状を1枚、損するなぁ。」としぶしぶ委任状を使用して、同居する日本人の住民票を請求したところ、委任状での請求を断られました。
要するに、同居する申請者の権限で請求しようとしても、同居はしていても同世帯になっていなければ、申請者本人にもともと権限自体がないので、委任することもできないわけです。一般の人は世帯統合の手続きをしていない場合がほとんどですので、世帯員しか請求権限がない以上、あたりまえといえばあたりまえなことでした。また、帰化後の住民票の事も考えるならば、世帯統合しない方が良いという事情もあります。
一方で、行政書士の職務請求は「申請者が持つ権限を委任により受け継いだこと」が請求権限の根拠ではなく、「正当な行政書士業務を遂行するにあたり、職務に必要な書類を請求すること」が請求権限の根拠となるので、世帯統合されていない同居者も、さらにいえば同居さえしていない婚約者でさえ、住民票の取得が可能となるわけです。
ただ、これは考えようによってはすごいことで、職務請求書により日本列島に居住する全ての住民の住民基本台帳全部事項証明書が請求できてしまうことになります。
虚偽申請による請求を阻止する為の担保は、行政書士の「首」そのものです。
他方、帰化申請者本人は、差し出す「首」がないので、自ら窓口に出頭しても、別世帯となっている同棲者の住民票を取ることができません。
(婚姻前に世帯統合するのは先述のとおりあまり良くない結果になりますから)同棲者から自分宛の委任状をもらうか、同棲者と一緒に来てもらわなければ、住民票を交付してもらえないのです。
参考リンク:
提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」