経営管理(旧投資経営)の方は早めに帰化申請か永住申請を

 今日は夕方16時に滑り込みで大阪入管に行ってきました。
 留学から経営管理への在留資格変更許可で、新しい在留カードの交付を受けるためです。
 今週は受付前の佳境に入っている帰化申請がバタバタと続き南港まで行く時間が取れるのが今日の午後だけだったため、3時までに谷町2丁目の事務所にパスポートと現在の在留カードをご持参いただく約束だったのですが、お仕事ご多忙で遅刻されたため急遽谷町四丁目駅で受け渡しをして中央線で滑り込んだのでした。

 在留資格変更の方は、今年3月に大学を卒業される方だったため卒業式前日に申請を押し込んだはいいが、そのタイミングで申請をせざるを得なかった事自体から類推される通り、そりゃもうハードルの高い申請だったのですが3ヶ月の長い審査を経て何とか許可に漕ぎ着けたのでした。
 経営者にとってはわずかな金額とはいえ学生さんにしてみれば大金の750万の投資を既にされていたので、不許可になったら可哀想でしたから、ほっと肩の荷がおりた気分です。

 昨年までは「投資経営」と呼ばれていたこの「経営管理」の在留資格ですが、2015年の法改正で「経営管理」と名前が変わって以来、審査基準が厳しくなったというか、確実に適正化されて来た傾向にあるように感じます。
 適正化と言うのは、それまでまあまあええ加減だったものがビシッっと正されるようになったというだけのことですが、入管への在留資格関連の申請者自身に取ってみれば、やはり「厳しくなった」と当然に感じてらっしゃる事でしょう。

 経営管理ビザ(正しくは在留資格)の場合、適正化されたと如実に感じる事のひとつが「現業の禁止」です。

 投資経営の時代から現業は原則禁止だったのですが、それでも昔は、例えば「中華料理人が独立して店中華料理店を経営する」などというシチュエーションで、足りない部分を補うパートをほんの数名雇って、実際には大将が一日中中華鍋を振っているといった案件でも、500万以上投資して2名以上の従業員を雇う準備ができていれば結構すんなりと通ってしまっていたようです。

 しかし、昨年来、入管を扱う行政書士仲間の話でも、経営管理が通ったのはいいが、1回目の更新時に従業員がやめていて更新ができなかった、などの事例が聞かれるようになってきました。

 実際、今日の変更許可の際も、いつものように窓口でチャチャチャと事務的に終わらずに、わざわざ奥のカウンターに呼ばれて、現業の禁止をこんこんと諭され、「更新時に拒否することもあるから」と宣告されました。
 実のところ、カウンターで言われた台詞は、ほんの先程谷四の駅で偉そうに私が吠えていた言葉と寸分たがわぬものだったので、「それ今、本人に言ってきたばかりです」と要らぬ口応えをしてしまいました。

 中華料理店の経営など現業に密接に関係する経営管理ビザ(在留資格)の方は、今後、いつ在留更新ができなくなるか、非常にご心配な事と存じます。

 ひとつの解決策としては、帰化申請や永住申請のように在留更新を気にする必要のない環境を整えて行くのも良い方法かもしれません。

 しかし一方で、経営管理の厳格化と連動するように、帰化申請や永住許可申請も現業の方に対する審査の姿勢が非常に厳しくなって来ている感があり、許可となっても長期戦となるケースも出ています。行政書士会での研修程度では得られない、自分で開発したノウハウの多さが許可を左右する状況だと存じます。

 また、入管も賢いですから、現業の方の永住逃れができないようにグレーゾーン案件では1・1・3といった定型的な流れに当てはめず、なかなか3年、5年といった在留期間をくれませんし、それどころかちょっとした環境の変化で3年がまた毎年更新に戻されたりしています。

 法務局は法務局で、現業の方の申請に対する審査が厳しくなって来ている事が如実にあらわれ、昨年、「毎年更新の方」の帰化申請をお受けしましたが、受付から許可までほぼ丸々1年掛かりました。その間にも何度も本人が呼び出され、申請後も1年中ずっとサポートをしていた記憶があります。事務所にお越しになってから許可までの間に2回在留期間更新があったほどです。
 本人ご家族ももうあきらめムードが漂っていましたが、私には国籍法と入管法を根拠に確たる自信があったので、ずっと勇気付けてきました。とくにこの2回の在留更新の際に、魔法というか、問題点に対する真摯な解決のための仕掛けをしておいたので、帰化の許可を勝ち取る上でも今から思えば少しは役に立ったかなと思います。

 ここで間違えてはいけない事は、法務局も入国管理局も、帰化申請や永住申請にあたって、現業いじめをしているわけではないという事です。

 現業の経営管理者になった経緯であるとか理由をよくよく考えてみると、そこには慎重に審査しなければならない由縁が見えてくることがあります。
 というのも、例えば、もともと留学で渡日してきた人が現在現業の仕事についているとすれば疑問があって当然です。
 普通に渡日時の目的や目標通りに毎日を真面目に暮らしてこられたのであれば、留学から技術人文知識国際業務などに変わっていてしかるべきだといえるでしょう。
 ところが、いつの間にか中華鍋を振っている、カレー鍋を掻き混ぜている、接客をしている、という状況になっているとすれば、どこかで当初の目標や気持ちが潰えたのだという人もいることでしょう。
 そして、四六時中現業という状況であったり、現業となる過程の中に度を越えた資格外活動があったりする例は山ほどあり、それらは日本・日本人の国益に反するものです。日本の労働者の立場になってみれば仕事をとられて日本人があぶれている状況を作り出しているのですから。
 つまりは、慎重な審査があって当然といえば当然の事です。

 それが理解できているか、申請者に同情するだけの仕事をしていないか、という事が帰化申請や永住許可といった大きなターニングポイントにある申請では、行政書士には求められます。入管の立場、法務局の立場で、ビシビシとお客さんにものをいう根性(笑)が必要なのでしょう。

 いずれにしても、経営管理の方は、しっかりと時機を見定めて、国籍や在留資格について見直していく時代にあるのかもしれません。