跛行婚は帰化申請に影響するのか

 歌手の浜崎あゆみさんとオーストラリア人俳優マニュエル・シュワルツさんとの離婚報道で、彼らが日本の自治体への婚姻届出をしていなかった事を知りました。

 夫の国籍であるオーストラリアのみに婚姻届出をした跛行婚だったのかと思いきや、婚姻は米ネバダ州ラスベガスで挙行されたという事なので、オーストラリアにも提出されていなければ、跛行婚どころか、どちらの国にも届けられていない婚姻であったことも考えられるわけです。

 では、どちらの国にも届出をしていなかったとしたら、この婚姻は無効なのかというと、双方の本国の渉外関係を規定した法律において婚姻挙行地の法律による婚姻を有効と認める条文があれば、正式な婚姻として認められます。
 浜崎あゆみさんが日本の国籍を持っていると仮定して、少なくとも日本の法律上は挙行地法による有効な婚姻は日本でも有効な婚姻と認められます。もとのご主人がオーストラリア国籍を持っているとすれば、オーストラリアの渉外法を確認してみる必要があるでしょう。

 本国への婚姻届出が双方なされていない婚姻や、跛行婚が帰化申請に影響を与えるのかというと、まったく与えない事はありえません。本当に跛行婚でよいと考えている人がいたら、あまりにも遵法精神がなさすぎますが、跛行婚であるということ「のみ」によって問題となることは比較的少なく、前述の渉外法上、正式な婚姻でありさえすれば、正式な婚姻であるとして帰化後の戸籍上、認定されることでしょう(もちろん、離婚していなければ)。

 しかし、帰化申請の実務上、頻繁に出会う深刻な身分関係は、「跛行婚が原因となっている」ことが多いです。それは、双方の国にその婚姻が登録されていないことを良い事に重婚となってしまっている場合や、きちんと離婚をしないまま他の方と暮らしだして事実婚となり子供が生まれてしまうケースが、本当によくあるからです。

 このような場合は、帰化申請をする前に家庭裁判所にて、裁判を行ってからでないと帰化申請ができない事態となることが多いです。
 このような場合、ほとんどのケースで帰化申請をあきらめられることになります。決してあきらめる必要はないのですが、裁判に掛かる時間面と費用面から日本人になる夢を捨てる方も少なくありません。

 いずれにしても、婚姻したのに自分の国に届出しないというのは、事情があって本国に帰ることができなかったなどの理由で届出をしたくてもできなかったという場合を除いては、「国民として」、あまり好ましいことではありません。
 とくに日本には、せっかく「報告的婚姻届出」という制度があるのですから、届け出る機会があるのなら、届け出ておくべきことは言うまでもないでしょう。それが日本人のならわしです。

 

提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」