中国の国防動員法が帰化申請の動機のひとつとなった方

 先日、申請支援センターから帰化申請が許可になったばかりの申請者の方から電話がありました。帰化届や在留カード返納その他の帰化後の手続きが無事に済みましたというご報告のお電話です。

 そのやり取りの中で、ご本人が今度帰化が許可となって、どうしても聞いておきたいことがあるとおっしゃるのです。

 「なんですか?」と尋ねると、電話の向こうで「コクホドウイホウという法律と私は関係しますか?」とのご質問。

 コクホドウイホウが、中国の国防動員法であることがわかるまで5分位かかりました。
 今更ながら、よく日本語条件を通過できたものだと思います。
 申請支援センターの日本語猛特訓がなければ、絶対に帰化申請が許可されなかったと言って良いでしょう。

 で、「国防動員法」についてですが。

 「動員」という言葉を聞くと、戦争を知らない子供たち世代の私であっても、戦時中の「国家総動員法」の事は祖母や親などからよく聞かされていましたから、尋常ではない気持ちとなります。
 とくに私たちの親以上の世代では、国家総動員法第四条に基づく国民徴用令や国民勤労動員令を思い出して、身の毛もよだつのではないでしょうか。

 中国で平成22年7月1日に施行された国防動員法も、趣旨は全く同じであり、「国内の有事の際には」国防総動員法第四十八条四十九条により、中国国民は、戦争その他、国家の為に動員されるのです。
 ご本人は女性なのですが、中国の動員は女性にも及びます。もっとも兵役に限らないですが。
 いずれにせよ、帰化申請者ご本人が、ずっと気にされていたのも無理はありません。

 だって、第二次世界大戦前の日本と同じ状況なのですから。

 「国内の有事」というのは、外国とお互いに主張しあう領海なども含まれるわけです。
 また、兵役のある台湾・韓国などの方にとっても、他人事と考えていられない、大事な話です。

 ただ、今回、めでたく日本に帰化されて、もう日本人となられたので「今後は安心していいんじゃないですか」とお話しいたしました。

 戦争がイヤで日本に帰化する。確かに、帰化の動機としては納得できる話です。
 但し、帰化の動機書に記載するのかどうかは、十分慎重に考えなければなりませんでしょうし、同じ内容であっても帰化申請において表現の仕方を考えなければえらいことになりそうですね。

日本の国家総動員法

第四条 政府ハ戦時ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ帝国臣民ヲ徴用シテ総動員業務ニ従事セシムルコトヲ得但シ兵役法ノ適用ヲ妨ゲズ

中国の国防動員法

第四十八条 国家决定实施国防动员后,县级以上人民政府根据国防动员实施的需要,可以动员符合本法规定条件的公民和组织担负国防勤务。

 本法所称国防勤务,是指支援保障军队作战、承担预防与救助战争灾害以及协助维护社会秩序的任务。

第四十九条 十八周岁至六十周岁的男性公民和十八周岁至五十五周岁的女性公民,应当担负国防勤务;但有下列情形之一的,免予担负国防勤务:

(一)在托儿所、幼儿园和孤儿院、养老院、残疾人康复机构、救助站等社会福利机构从事管理和服务工作的公民;
(二)从事义务教育阶段学校教学、管理和服务工作的公民;
(三)怀孕和在哺乳期内的女性公民;
(四)患病无法担负国防勤务的公民;
(五)丧失劳动能力的公民;
(六)在联合国等政府间国际组织任职的公民;
(七)其他经县级以上人民政府决定免予担负国防勤务的公民。
  有特殊专长的专业技术人员担负特定的国防勤务,不受前款规定的年龄限制。

第五十条 被确定担负国防勤务的人员,应当服从指挥、履行职责、遵守纪律、保守秘密。担负国防勤务的人员所在单位应当给予支持和协助。

 
 

 うーーーん。すごい内容ですね。