明日から帰化許可になられた方も即日選挙に投票できます

 今年、平成24年7月9日には入管法が改正され、外国人登録法が廃止されるとともに住民基本台帳法が改正されました。
 このことは、帰化申請が許可になり日本国籍を新たに取得された方の選挙権についての大きな意味を持ちます。

 今日までは、帰化が許可になったとしても、登録市町村の住民基本台帳に3箇月以上の登録がないため、公職選挙法上、地方選挙においては選挙権が無く、国政選挙においては選挙権はあるが住民基本台帳に3箇月以上の登録が無い者は選挙人名簿に記録することができないため、選挙人名簿に登録されるべき旨の決定書又は確定判決書を手に入れて投票所に行かない限りは投票することができませんでした。

 しかし、今年の住民基本台帳法の改正により、外国人住民についても住民基本台帳に氏名を記録されることができるようになったことから、7月9日から3箇月を経過する明日、平成24年10月9日からは日本国籍を持つ20歳以上の国民である以上は、市町村は帰化したばかりの人も選挙人名簿に記載しなければならなくなったので、国政選挙においても地方選挙においても、帰化して即日、日本人としての権利を行使することができるようになります。

 帰化申請が許可になる以前に3ヶ月以上海外渡航をすると帰化条件上の居住期間がリセットされますから帰化は歔欷になりません。つまり、帰化許可がなされたということは少なくとも3箇月の住民基本台帳記録が存在するということです。(細かいことを言うなら、法律上はほとんどの帰化許可者に3箇月の記録が存在し、実務上は恐らく全員の帰化許可者に3箇月の記録が存在します。)

 なぜ、このようなマニアックな話ができるかといいますと、実は、住民基本台帳法の改正前後にいくつかの市町村の選挙管理委員会から、申請支援センターに「官報の帰化告示」の読みかたについて、お問い合わせのお電話があったからなのです。

 というのも、公職選挙法第二十一条4項に「市町村の選挙管理委員会は、政令で定めるところにより、当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を調査し、その者を選挙人名簿に登録するための整理をしておかなければならない。」と規定されている通り、正確な選挙人名簿を管理する事は各市区町村の選挙管理委員会の法定された義務だからです。

 そのため、明日平成24年10月9日以降の選挙人名簿が不正確となり違法とならないために、各自治体において帰化許可を受けた外国人住民を全て把握していかなければならず、さあ大変ということになったのです。

 もちろん、市区町村ですから、まずは法務省民事局に「帰化許可された者についてのまとまった情報を手に入れる手段は無いものか」と問い合わせたことでしょうが法務省の回答は「官報告示を毎日見なさい。」とありきたりの返事しかもらえなくて当然です。直属の下位機関である法務局でさえ、こつこつと毎日官報をチェックしているのですから。
 中央は地方に協力を求めることはあっても、地方に協力することはしません。いえ、できないし、してはならないのです。中央が地方の協力をすると、コストにより日本国はすぐに滅亡してしまうからです。

 そして、申請支援センターも帰化申請のお手伝いを続けてきたノウハウに基づいて、毎日官報をこつこつとチェックしています。ビジネスですから、行政書士から帰化許可になった申請者に、許可の案内をして当然です。

 ところが、これまで官報を毎日チェックしてきた経験の無い選挙管理委員会の職員にしてみれば、「正確な選挙人名簿の管理を義務付けられている以上、毎日官報を読むにしても『漏れ』があっては選挙権という非常に重要な人権をないがしろにすることになってしまうので、『確実に』官報の帰化許可告示を追いかけていかなければならない」という事態に至ったわけです。

 そして、ビジネスの必要に迫られて、同じように『確実に官報の帰化許可告示を追いかけてきた』申請支援センターに、帰化許可の官報告示のルールについて、お問い合わせをしてこられた次第です。

 帰化許可は官報のどこに掲載されるのか、違う場所に掲載されることはあるのか、違う場所に掲載されるルールはあるのか、それは法定されているのか、過去の歴史の中でどのように帰化許可の告示が官報に掲載されてきたのか。

 それがはっきりしないと、今後の選挙人名簿が正確に作れません、お手上げなんです、と頭を下げて来られました。

 申請支援センターに帰化申請を依頼していない一般の方や同業者からの電話だと「自分で調べなはれ。」と冷たく突き放すことにしているのですが、私も議員秘書時代から、選挙管理委員会とは仲良くすることを信条にしてきましたので(笑)、優しくノウハウを教えてあげました。
 まあ、聞いて来られた選管の方は、安心して「漏れ」なく官報をチェックして行かれていることでしょう。

 そして、そのような事があった経緯から、その時に、選挙人名簿と帰化許可との関係について、法律を読み返して整理しておいたので、ちょっとしたマニアックネタを書くことができました。

 いずれにしても、明日からは帰化許可者は即日、投票可能です。