日本国への帰化申請が許可され日本人になった方は戦後30~40万人程度はいらっしゃるものと思われます。現在は毎年1万人前後が許可になっていますが戦後すぐの時代はほとんど許可されない申請だったようで、平均5000人と考えて戦後70年で35万人という大雑把な計算です。
昭和60年の国籍法改正の際に届出による国籍取得の経過処置もあり帰化申請者数の伸びが一気に落ち込んだ時期の分を差し引いて30万人程度というところが妥当な数字でしょう。
これらの人々は全て、紛れもない「単なる」日本人です。
ところが一部の心無い他人や、場合によっては、こともあろうに自分自身から「特別な日本人」のような表現をされることを見かけることがあり、非常に残念に思います。
例えば、「朝鮮系日本人」「米国系日本人」とか、「ヨーロッパ系日本人」「アフリカ系日本人」などといった呼び方です。
「日系ブラジル人」といった言葉が普通に使われていることを考えると、同じような趣旨の使われ方なのでしょうけれど、私個人としてはその方のアイデンティティの上で「○○系日本人」となるくらいなら、帰化しない方が良いのではないかと思います。
日系ブラジル人という響きは、どちらかというと日本に住んでいる人がブラジルに住む自分たちの仲間、というような日本から見た親密なニュアンスが含まれているのではないかと感じますが、ブラジル人にしてみたら、仲間を送り込まれるのはえらい迷惑なことでしょう。また本人にしてみても、せっかくブラジル人になったのに、「日系」「日系」と国内外から言われるのも迷惑なことでしょう。
日本にしてみても、他の国のアイデンティティのままで、日本人としての権利を自在に発揮する国民の存在は、あまり嬉しいものではありません。
もちろん、故郷を懐かしんだり、親密な気持ちを持つことは自然で当たり前なことですが、度を超えて、昔の国の民族的自覚を持ち続けていることはどうかなあ、と思います。
「いくら帰化したところで、在日外国人であることに変わりはないんだ。」などと自虐的につぶやくご本人もいらっしゃいますが、そのような「特別な日本人」に自分を位置付ける必要なんてまったくありません。
帰化した人は、ただの日本人です。
そして、紛れもなく、ずっと私たちの仲間なのです。