朝鮮籍の方の帰化について

 帰化の相談にお越しになられた方が「私の国は北朝鮮なのです」とおっしゃる事があります。

 国籍についての認識は、ご本人のアイデンティティーに関わる大切な話なので、私としてはできるだけ、本人が北朝鮮国民でありたいと願われるなら北朝鮮国民と「考えて接して」差しあげようと思っているのですが、ほとんどの場合、とくに自分のアイデンティティーとして大切になさっているのではなく、日本での住民票や古くは外国人登録法上で登録されていた「朝鮮」という表記をもって、帰化相談にお越しになられた際に「北朝鮮人なのです」とおっしゃられているだけである事がほとんどです。

 歴史を話し出すと長くなるので割愛しますが、要は日本での登録上の表記が「朝鮮籍」であるだけで、とくに朝鮮民主主義人民共和国の国民であるという意味ではないのです。
 第一、日本国は朝鮮民主主義人民共和国を承認していないので、この登録も「国としての朝鮮」ではなく「地域としての朝鮮」であるだけです。
 実際、本国における住所等の表記を確認すると、ほとんどの方が現在の韓国国内に登録基準地(本籍地)をおいてらっしゃいます。

 ですから、帰化の手続きを進めていく上では、法務局も韓国籍の方の帰化申請と何ら変わりなく進めて行ってくれるので、「朝鮮籍であることのみ」においては全くご心配なく帰化申請を申請支援センターにご依頼いただけます。

 しかし、現在まで韓国に国民登録をしてきていない事は、それに付随する問題点がたくさん出てくることを意味し、帰化申請に慣れた行政書士には大したことではない案件だったとしても、自分では帰化申請ができないであろうレベルまで”難易度”がググッと上がります。

 また、「帰化申請が難しい」とかどうとか言うことよりも、現状に対するもっと根本的な問題点と対処のアドバイスを受けなければならないので、帰化案件毎に「どうしましょう」と法務局に相談しながら帰化を進めていくような行政書士は、後で申請者から叱責を受けることになるので要注意です。法務局は「帰化申請の進め方のみしか」教えてくれないからです。
 帰化が許可になってしまえば、もう後戻りできませんので、朝鮮籍の方の帰化申請は本当に気を使います。
 帰化申請業務がどんなに大変で、後でどれほど恐ろしい申請なのか理解せずに、気楽に帰化業務に携わっている方が多いことには驚かされます。

 ちょうど今日、土曜にご依頼いただいた朝鮮籍の方の韓国戸籍を検索に行ってきた帰りです。
 あらかじめ予想していた事ですが、やっぱり、というかご本人もお父様も家族関係登録簿に登録されていませんでした。午前中に既に判明している他の情報から帰化自体が問題なく進む事は確認できていますが、韓国戸籍が無いと言うことは「大変な事」ですので、許可後に私が切腹しなくて良いように慎重にアドバイスしながら進めて行きたいと考えています。