帰化申請の添付書類にアポスティーユは必要か?

 帰化申請に関わらず、海外の官公庁で交付された全ての書類は、日本国内の役所に提出するために有効な書類と認められるには、その国の国家レベルでの公印認証が必要であることは「常識」と考えて下さい。

 国際間で国家レベルの認証ということは、書類を交付する国の外務省認証と書類を提出する国の外務省認証が必要ということです。提出する国の外務省認証ということはその出先機関である大使館・領事館の認証ということです。さらに交付する国の外務省も地方レベルの公印を全て把握しているわけではありませんから、もとの地方公印の上級官庁となる国の官庁の認証を受けてからさらに外務省の認証を得なければならないこともあれば、提出国の提出先の機関自体が地方が発行した書類自体を受け付けないこともあり、国境を越えるための書類認証の手続きというものは本来、非常に慎重な作業を要する煩雑な手続きなのです。

 ただし、ハーグ条約への加盟国同士であれば、この長い作業を少しでも軽減するために、書類交付国のアポスティーユにより、提出国の公印認証を省略することが可能です。アポスティーユの手続き自体も依然面倒な作業ではありますが、国を越えて有効な書類となるためには、常識的に必要な作業なのです。

 帰化申請においても、国籍の属する国における多くの書類を提出することが必要となりますが、これらの国家的な公印認証や、アポスティーユが必要となるのかということですが、どうだと思いますか?

 これは行政書士の方でも、間違って認識されていることが多いと存じますが、原則は「必要」です。「帰化申請においても、公印認証やアポスティーユが必要」というのが、原則なのです。

 しかし、帰化申請の際に、例えば韓国のかつての戸籍謄本や現在の家族関係登録簿記録事項証明書に、領事館発行の書類にも本国面事務所発行の書類にも、公印認証やアポスティーユ証明をつけて提出したという話は聞いたことがありません。
 また、中国の公証処で発行される各種公証書に公印認証やアポスティーユ証明をつけることも、ほとんどのケースで、ありません。
 中国はハーグ条約に加盟していませんから、アポスティーユどころか、本来、公印認証が必要なはずです。韓国でさえハーグ条約加盟が発効したのは平成19年7月14日以後ですから、それまでは公印認証が必要であったほどです。

 しかしながら、これらは相手国との特別な関係や過去の帰化申請の中で法務省や法務局に蓄積された豊富な本国書類見本があるから、たまたま不問になっていると考えなければなりません。
 現実に、上海などで発行される公証書の中には他の公証書の書式と違っている場合も多く、特異な書式の物が提出されてきた際には、本物かどうかを確認して行く作業が、「申請受付後に」、法務省や、法務局において内部的に発生するということです。

 つまり、もっと端的に言うならば、「許可に時間が掛かる」ということです。

 相手国がどこであるのか、さらにどこの地方の書類を取るのか、申請者の状況がどうなのか、ということも考慮して初めて、「アポスティーユを省略しましょう」ということを決定する必要がありますし、出てきた公的書類の内容によっては作戦変更もしないといけません。
 さらに、帰化申請で提出する書類は必ずしも公的書類ばかりではありませんから、その書類の種別によっては、作戦を考えていくことも必要なのです。

 法務局から指示されて、しぶしぶ書式を変えての取り直しや訂正を行ったり、別途書類の検討を始めているようでは専門家とはいえません。
 専門家は、「法務局に対して、どのような作戦で、どのように証明していくか」ということを、初めて申請者と顔を合わせた時から、考えているのです。

 

参考:帰化申請の必要書類(添付書類)

提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」