そんたくは思いやりの心 | 東京法務局での帰化申請受付

東京法務局での帰化申請

東京法務局での帰化申請

 先週末は東京法務局への出張でした。

 帰化申請の受付本番です。
 それも一発受付を目指しての訪庁です。

 普通、帰化申請というのは、事前相談を重ね、書類点検の出直しも何回かあり、やっと受付にたどり着いてスタートするという手続きを踏むというのが一般的です。

 一発受付というのは、事前相談も書類点検も帰化受付も初回時に済ませるというある意味離れ業です。法律上は全ての書類が揃っているのに受付を拒否するのは法務局の違法行為となるとはいうものの、帰化申請というのは60種類以上の添付書類がある分突っ込みどころが多く、一発受付は仲々の曲芸なのです。

 ところが、先週の帰化申請受付では私に手痛いミスがありました。書類の添付忘れです。
 それも細かい部分ではなく、帰化申請を専門にやっている行政書士なら絶対に忘れることのないような基本的な書類でした。

 今回の申請は会社経営者の厚みが40cmほどもあるようなヘビーな申請で、幾つもの細かい論点を解消すべく力を注いで来ましたが、仔細に構わりすぎて大きな部分を見逃してしまったのでしょうか。
 いえ、見逃したわけではない証拠に私の作成した一覧にもチェックも入っているのですが、取得して添付したものと勘違いしていたのです。

 でも、法務局の書類点検で話をしていて、私の記憶に請求した覚えがない。

 相談員さんは私のチェックを見て「すでに取得されているのだけれど事務所に置いて来られたんでしょう。」と依頼者の手前、助け船を出してくださるのですが、幾ら思いだそうとしても、記憶の中に片鱗もないのです。

 まあ、私は大阪弁でいういわゆる「シャベリ」なので、相談・点検が始まった時から毎回不安な心細さを悟られまいと立て板に水のごとく余裕しゃくしゃくの(振りをした)話芸を披露していたのですが、自分の空虚な記憶に気付いてからは「あかん。もういっぺん新幹線乗らんと。」との思いが頭の中を渦巻いて落胆し借りて来た猫のようにおとなしくなってしまいました。

 帰化申請において申請書というのは1枚だけで、この帰化申請書さえ間違いなく記載されていれば、膨大な他の書類は全て、「帰化に必要な条件を備えていることを証するに足りる書類」つまり、疎明資料にあたり、法務局が「疎明完了!」と認めてくれれば法律上受付は出来る理屈ではあるのですが、実際は法務局の要求する添付資料が少しでも欠けていると「疎明できていない」となって、やはり受付けてもらえないのです。

 幸いにも今回は膨大な資料が揃っているので、その書類が無くても間接的に「帰化に必要な条件を備えている」と疎明出来る状態だったので、あとは座っているだけで醸し出されるご本人の人と為りにより、斟酌の結果「疎明完了!」と相成りました。

 結果的には一発受付となったので、ほっと胸を撫で下ろしました。

 ところでこの斟酌の事を、少し意味が違う忖度(そんたく)と表現する事がにわかに多くなってきました。

 しかし、斟酌も忖度も、相応の立場や関係にある人が比較的弱い立場にある相手の心情や事情を汲み取って温情をかけるというニュアンスなのかなと、個人的には感じています。
 「思いやりのこころ」の存在が確かにそこにあるのでしょう。
 エライさんの顔色を伺って諂諛するというのとは少し違うのではないかと。

 そういった意味では、今回の法務局の温情は、まさしく斟酌でした。
 武士の情けですね。

 でも、情けが必要な仕事をしてしまって猛烈に反省しています。

 完璧な仕事をして法務局を唸らせるカラーが私の自負だったのですが、吹っ飛んでしもたなー。