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ホリエモンの錬金術と不真正連帯債務

 ライブドア粉飾決算事件を予言した「ホリエモンの錬金術」
  著作者の山根治さんが運営されていると思われる株式会社フォレスト・コンサルタンツ(代取:山根純さん) のウェブサイト「ホリエモンの錬金術」で、件の記事を拝見してまいりました。
 

ホリエモンの錬金術/山根治さん(フォレスト・コンサルタンツ主任コンサルタント)

ホリエモンの錬金術とは

 「ホリエモンの錬金術」は、株式会社フォレスト・コンサルタンツ(代表取締役山根純さん)の主任コンサルタンツである山根治さんが「日々考えることを気の向くままに書き綴って(原文ママ)」こられた"山根治blog"の中で連載されたエッセイです。

 テーマとして取り上げられているのは、ホリエモンこと前株式会社ライブドア代表取締役社長堀江貴文さんとこれまでの株式の流れです。

 「ホリエモンの錬金術」において、山根治さんは決算書や有報(有価証券報告書)や大量保有報告書などの法定書類を分析し、昨年2005年3月から7月までに「ホリエモンの錬金術1」から「ホリエモンの錬金術20」までと号外の2部を合わせて22回の連載を続けられました。

  「ホリエモンの錬金術1」の中で山根治さんは、「会社が公表している第8期と第9期の有報を私なりの方法で分析した限りでは、粉飾の疑いが極めて濃厚である」と書かれ、「ホリエモンの錬金術5」では私が提示した3つのポイントがしかるべき機関でそのうちの1つでも事実として確認され、ライブドアの上場適格性に問題ありとされるならば、ライブドアの上場廃止が現実問題として検討されるに至るでしょう。」と予言めいた記述もされていました。

 実際、今回その予言がまさに当たろうとしているライブドア堀江社長の逮捕劇ですが、捜査中のことでもあり、実際に「ホリエモンの錬金術」に書かれた内容の検証もしていない段階でのコメントをすることは適いませんが、「ホリエモンの錬金術」の中に書かれていた「ホリエモンの錬金術」の3つのポイントを取り上げておきたいと存じます。

  「ホリエモンの錬金術」の中で、「3つのトリック」とも表現されているこれらは次の3点です。

< 第一のトリック(とされたこと)>
  東証マザース上場にあたって「光通信とかグッドウィルとか大和証券SMBCを仲間に引き入れて、幻の優良会社をデッチ上げ(原文ママ)」、会社の評価額を1,440倍にもつりあげたこと。

<第二のトリック(とされたこと)>
  上場後から3万分割、上場直前の分割を含め36万分割という、「破天荒な(ママ)」株式分割とそれにセットのように行われた公募増資。

<第三のトリック(とされたこと)>
  「株式分割&公募増資」の際にさらにセットで行われた「一見急成長している優良会社のような決算書(ママ)」による「決算数字のお化粧(ママ)」。
 ホリエモンの錬金術では「上場後の株価を維持、あるいはさらにつり上げるためのものでしょうか(ママ)」との疑問が書かれています。

 

もし「ホリエモンの錬金術」での分析が真実だったら

「ホリエモンの錬金術」と不真正連帯債務

 今回の堀江前社長たちの逮捕劇は、この第三のトリックから暴いていこうという捜査手順なのかもしれませんが、もし「ホリエモンの錬金術」にかかれたトリックが全て真実であり、第一のトリックまで遡及されることになれば、それは何を意味するか。その点だけ説明しておきましょう

  もし、堀江前社長たちが有罪となり粉飾決済が違法となって、例えば、損をした投資家が詐欺の被害者という立場になったとしても、第三のトリックが暴かれるだけでは、それらの株主たちは何の得にもなりません。

  いくら民法第44条によって、法人(この場合、株式会社ライブドア)が不真正連帯債務を負ったところで、何の救済にもならないのです。昨年暮れに「時価総額8000億円」と忘年会で歌われたライブドアにも、いまや損害賠償に堪えれるだけの資金力はないからです。
  原告となる投資家たちが民事訴訟で勝つことは、被告に賠償能力があってこそ意味のあることなのです。

 また、違法行為があったとしても、株主は機敏に動き適時売却によって損失回避や損失限定を行える可能性もあることから、原則、直接取締役に請求できません。これには高裁ではありますが判例も出ています。

 しかし、第一のトリックが真実だったとして、さらに損害との牽連性も認められ、不真正連帯債務を負う者の範囲が広がれば話は変わってきます。
 株主代表訴訟によって、違法行為をした取締役やその他の共犯に対し、損害賠償請求を行う道も生まれてきます。ここまで至ってはじめて、民事訴訟を起こす意味もでてくるわけです。

 株主代表訴訟では会社が賠償によって損害を回復するだけですので、株主は株価の回復によって間接的に損害回復するにすぎないとはいえ、集団訴訟を提起しようという救済の動きも出てきました。

  実際、集団訴訟を予定している弁護士の報酬には、例えば着手金一名5万円+経済的利益の15〜20%というような提示が見られます。せっかく勝っても、実質上経済的利益がなければ報酬は着手金×自分の集めた被害者の人数しか見込めないでしょう。しかし、賠償することのできる相手が存在する限りにおいて、仮に8000億円−ホリエモンの仲間の保有分が被害額となるようなことでもあれば、弁護団の報酬総額は非常に大きなものとなります。あとは、どれだけ依頼者のシェアを伸ばすかということでしょうか。また、本当に株主代表訴訟でいくのかどうか、ということも気になります。少し見守っていきたいと存じます。

  いずれにしても、被害が賠償される可能性のあるうちに警鐘をならしておくことは、検察としても避けることができない唯一の道であったのではないでしょうか。「今回の逮捕がなければ、損をすることはなかった。」と主張される方の意見も率直なものだとは納得しますが、いつかさらにとてつもないところまで到達してからの破綻を考えると、英断であったかもしれません。

  「ホリエモンの錬金術」の中では、堀江前社長が想定しえた終着点について推察する記述があります。いくら、時価総額が大きくても持っているだけであり市場で全て普通に売り抜けることの難しい膨らみすぎた株式を、彼が本当の資産に変えることができる可能性はふたつだけでした。

  ひとつは、ライブドアが他企業に買収されるとき。
  もうひとつは、上場廃止などの理由により会社が解散に追い込まれ、清算価額を得るとき。

  現実は今、後者に近い位置にあるわけですが、事情はそれを許すはずもありません。
  あるいは、本人もずっとずっと想定していたことなのかも知れません。
  上場したときから、早く逃れたいゲームだったのであれば、やっとゆっくり眠れることでしょう。