帰化申請に限らず行政書士は情報に金を惜しむな!

 遠回しに言うのは嫌なので単刀直入に今から書く要旨をまとめると、「相談料を払う気もないのに忙しい時に帰化申請について質問の電話を掛けてきた行政書士が居て腹が立った」と、今日はたったそれだけのネタです。あとは僕の金銭に対する執着心が見透かされて気恥ずかしいブログ記事となる予定です。

 まあ、今ではお客さんから沢山の仕事をいただくようになった結果、自称経験豊富な行政書士とどこに行っても胸を張ってエバれるようになりました。

 そんな私でも、経験豊富となるまでは経験がなかったわけで、あるいは、経験が増えて来てからも、どうしても「ここだけ聞きたい」てな思いに駆られることも昔はありました。

 そんな時であっても先輩行政書士に聞いて解決していると、一向に力が付きません。また、大嘘を教えられることもあります。本当は申請する先に「堂々と名を明かして」訪ねるのが、間違いなく一番良い解決方法なのですが、そこを官公庁に聞いてしまって「ダメ!」と言われると、せっかく受任した、あるいは受任できそうな1件の仕事を失ってしまうんじゃないかと心配になることはあります。

 私は、帰化申請の条件関係等について、先輩の行政書士に尋ねたことは全くの一度もありません。

 ただ、初めて帰化申請の事前相談(初めての申請の時は事前相談に行きました)に行く直前の際に、僕の行政書士としての大師匠に「法務局に行くときには何に注意したら良いですか?」と質問をしたことがあります。

 今からしたら、超お馬鹿な質問だったと思います。
 今の私に同じ質問をしたら「それぞれの申請ごとに注意点は山ほどあるのだから、本人を連れて来ないで、そんな事を聞いてくるな!」と怒鳴られるでしょう。
 ただ、僕の大師匠は優しい人で怒鳴ることもなく「色んなことをお客さんから十分に聞いてから、代わりに法務局に聞いてあげてください。」とだけ漠然と答えてくれました。ま、その通りです。
 あと、「ひとつだけ言いことを教えておいてあげます。4時以降は一般の帰化申請者が居ないので、法務局側が気が楽になって、外国人の方が隣で相談している時には、普段聞けない情報が聞けることがありますよ。」と教えてくれました。

 約5分程度。後半を除いて、特に何のノウハウも伝授されなかったんですが、「まあ、そう取って食われるような怖い世界じゃないのだな」と漠然とわかっただけでも、僕にとっては有益な情報でしたので、1時間分の相談料を師匠の口座に押し掛け入金しました。

 この話には後日談があって、師匠の教え通り4時半頃に大阪法務局の国籍課に出掛けて行ったら、がらーんとしていて、誰も居ない。
 小さな声で「すみませーん」と呼んでみても返事も無い。

 仕方なしに大声で「すんまへん!」と大声をあげましたら、若い職員さんが出て来てくれて、「帰化相談は4時まで(当時)だから、もう相談はできません。」と叱られました。

 ところが職員さんの虫の居所が良かったようで「行政書士さんだから仕方ないので時間外だけど、『今回に限り、特別に』話を聞いてあげます。」と事前相談に乗ってくれたのです。もちろん普段聞けない情報など、当時の私は何も聞き出せませんでした(笑)。
 普段聞けない情報が聞けるのは、普段聞けない情報を聞くテクニックを持っていなければ聞きだせないのですから当たり前です。

 でも、師匠の事は全く恨んでいません。
 「4時以降に法務局に行くと叱られる」という情報は、価値のある情報です。それは私の身に染みました。
 自分の力が無いと情報も聞きだせないこともわかりました。

 また、帰化申請ではそれ以来、ただの一度も先輩に何かを聞いた事はなく、仕事を失う覚悟で、また、時には本当に仕事も失い、一件一件正直に法務局に聞いて来たのが全て僕の血となり肉となり、家族を養う糧となってきました。

 入管関係では、1,2回、先輩に電話したことがあります。
 その際でも、電話の最初の僕の第一声は、「ご多忙のところ恐縮であり、また、いきなりお金の話も失礼な事なのですが、もし電話で相談に乗っていただけるとしたら、一時間おいくらでしょうか。」と切り出します。

 情報は、料金を払って得る物なのです。
 また、情報を得られなくても、相談した以上は料金は払わねばなりません。

 笑って「いえいえ、相談料なんて不要ですよ。」と言ってくださった事もあります。
 それでその入管案件をお話ししましたら、「うーん。私はその件について経験が無いので申し訳ないのですけど、わかりません。ただ、考え方としては・・・。」と、本当に聞きたかったことは何ひとつ解決しませんでした。

 でも、正直に「わかりません。」とおっしゃっていただいた勇気と、時間を割いて私の話に3,4分程度付き合ってくださった事に感謝して振込口座をお尋ねしたのですが笑って答えて下さらないので、うちの1時間の相談料分の菓子折りか何かをお送りしておきました。

 でも、その本当に聞きたかった事というのは、「何かをインフォメーションセンターに聞いてわかりますか?中で相談した方がいいですか。」といったたわいも無いことだったんだと記憶していますが、「良く入管の仕事をしてらっしゃる方でも知らなくておかしくないんだ。」という情報自体が私を安心させるに足りる情報だったのです。

 だって、それを知らないことで、この仕事を失ったらどうしよう、と僕は真剣に悩んでいたのですから。

 全ての情報は、金なのです。

 それを理解して、その情報の価値をひとつずつ、慎重に積み重ねてきたので、今の自分があると思っています。

 実際に、過去の僕の知識が足りなかったためにお客さんが逃げて行ったという経験などは、何十万円という損をして買った情報です。

 相続業務や建設業の業務で、一番最初の受任に行く際の同行と何かがあった時に電話で尋ねて良い権利(実際には相談していません)を得るだけで仕事の報酬の半分を捧げて先輩にご一緒に受けていただいたこともあります。

 情報が金どころか、情報を得る権利さえ金なのです。

 僕に電話を掛けてくる人が、僕を怒らせる言葉があります。
 
 「いやあ。だいたい帰化条件のこともわかるんですけど、『たわいもないことでちょっと』引っかかっていることがあって、まあ、聞くこともないことなのですが、少し教えていただけませんか?」
 という、前置きで電話をしてくる人がほとんどです。

 『たわいもない』ことなら、聞いてくるな。
 大阪人っぽく、目ぇ噛んでしねと言いたい。

 そして、大抵、そのような人は、成功していません。
 情報の価値を知らないから、価値のある情報を何も得ることができていないのです。
 だから、売りものがずっと無い。

 ずっとずっと何も無い。

 情報の価値をもっと大切にしていただきたいと存じます。