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9月 20 2018

帰化相談には帰化申請をしないご家族こそお越しください

寄り添って仲良く帰化申請するのがベター

 日本国では、帰化申請は家族でするのが原則です。

 とくに夫婦間においてはその考え方が顕著です。
 それどころか旧法では、夫が帰化して日本人になると原則は妻や未成年の子も日本人となることが法定されていました。
 憲法が謳う男女平等の推進運動とともに「家」という概念から解き放たれるに従い、今では国籍法から配偶者や未成年の子の日本国籍自動取得の制度は消えましたが、帰化行政においては、ほんの十数年前までは日本人に嫁ぐ娘だけが帰化する場合などを除いては家族の一部だけが帰化申請を行うことは非常に高いハードルがあり、自らの国籍を決めるのは本人という考え方が定着して来た現在でもなお、やはり「家族全員」で日本人となることが原則的な考え方です。

 どちらが正しいとか、間違っているとかいう議論ではありませんが、日本人夫との間に子供ももうけて長年暮らしてこられた特別永住者の奥さんの「家族の中で私だけが日本国籍がなくて、ずっと、ずうっと、悩んで来ました」と相談時に涙を流される案件を沢山扱って来たせいか、家族はみんな同じ国籍である方が幸せなんじゃないかと私自身は感じていますし、旧法国籍時代の自動国籍取得の制度も、人間社会の自然な考え方の「ひとつ」に源流を発するものであったと思いを馳せます。但し、現在では並立する自然な考え方の「ひとつ」である個人の尊厳を優先しましょうという時代となって来ました。

 ここで重要な事は、帰化申請というものは「個人の人生にとっての一大事」であるとともに、「日本国にとっての一大事」であるという事です。

 「個人が家という社会を造り家が国という社会を造る」という考え方から、「個人が国という社会を造る」という考え方に変貌を遂げただけで、日本国を構成する基本要素こそが、国籍法の様々な規定により日本国籍を取得した日本国民に相違ありません。そして、その規定のひとつが帰化申請という手続きです。

 ひとりの人の帰化が日本国を形作るわけですから、或る外国人の帰化申請といっても、全ての日本国民にとって他人事ではありません。
 だから、法務省・法務局は全ての日本国民に成り代わって、慎重に帰化の審査をしてくれています。

 それは帰化条件に限ったものではなく、帰化したい理由そのものを初めとして申請者や家族の考え方や普段の暮らしなどをチェックしています。その必要性は、判例にいう「法務大臣は、同項所定の条件を備える外国人に対しても、なおその帰化を許可するか否かにつき、人口政策その他の政治的な事項をも考慮して、自由にこれを決することができる広範は裁量権を有しているものと解するのが相当である」という言葉が如実に物語っています。

 一方、申請支援センターは依頼者の味方として、帰化するにふさわしくない者であると「誤解されないよう」経験を活かして、法務局と「協調しながら戦って」行かなければなりません。

 この「協調しながら戦う」という事が非常に難しいことで、僕の帰化研修の講義の休み時間や講義の後に、ずらりと並ばれる行政書士の先生方からのご相談をお聞きしていると、多くの先生があまりに依頼者の立場に立ちすぎて、すでに法務局と「対決の構図」となっていらっしゃいます。
 
 対決の構図になると、ついつい「うまく申請できないか」とか「ばれないようにするにはどうしたらいいか」とか、本人に都合の良い事ばかり考えてしまいます。
 これは、上述の「個人の人生にとっての一大事」しか考えていない。国にとっての一大事であることが理解できていなければ対策の立てようがないですね。

 大時代的に申し上げましたら、帰化申請と申しますのは、帰化をして日本人になりたい申請者にとっての個人の尊厳と、この島に暮らす日本国民ひとりひとりの個人の尊厳の集大成である日本国の尊厳との妥協点を求める手続きであると僕はとらえています。

 ですから法務局は日本国民ひとりひとりの個人の尊厳の集大成を守るため、申請者の条件該当性や考え方等を注意して見守っています。
 他方、一般の申請者はやはりうまくやろう、ばれないようにしよう、と一生懸命です。

 法務局が申請者のウィークポイントを見つけるのに手っ取り早いのは、特異点を見付けることです。

 多数派と変わった部分があれば、その周囲を見渡せばその特異点が発生した理由や経緯が見えてきます。

 そして、冒頭で話した、家族で帰化申請するという原則と違う行為を敢えて押し通すという事は特異点に違いありません。あくまで少数派なのです。なぜ少数派かというと、家族でするのが原則ですと伝えられるからです。

 気の弱い、協調性に富んだ日本人の心(これを日本人の美徳と云います)を兼ね備えている人であれば、原則です、と言われたら、ああそれが原則なんだ、と思います。何でそれが原則やねん、誰が決めてん、とケツをまくる人は、とりあえずケツをまくるひとなんですね、というところから審査のスタートです。

 そしてなぜ全員で帰化しないのかという理由にこそ、そご家族の最大のアキレス腱があるといって過言ではありません。アキレス腱の手術をせずに放っておくと、大抵そこからほころびが出て家族全員不許可となるのがお決まりのコースです。

 申請支援センターでは家族の中に帰化申請をしない方がいる場合には、この難しいアキレス腱手術を”成功”させるために、その「しない方」とお会いせずに帰化申請を受任することはありません。

 先日、ASCの帰化相談会でうちの補助者が帰化申請をしたい家族だけでの相談予約を受けてしまいました。
 帰化申請をする人だけとお話ししても「全く」意味がありません。帰化申請をする人は来なくても帰化申請をしない人だけ相談に見えられる方がまだマシです。

 さらに帰化しない夫を連れて来られない奥さんというのは、僕の経験からすると、本当に悲しい悲しい闇のお悩みを心に抱えられておられる事がほとんどなので、「予約をキャンセルされても構わないし、断って来られたら、決してお引き留めしないでいいから、帰化したい人だけとお話ししても本人にも当方のビジネスにも元々全く無意味なので、ご主人を連れて来られるか聞いてみなさい。」と事務員に指示しましたところ、案の定、連れて来れないのでと、相談を辞退されました。
 いつもの、よくある流れであり、いつものよくあるお悩みです。みなさん、自分だけどうしてこんなに不幸なの、と思われてるのですが、あなただけの特別なお悩みじゃないんですよ、みなさん夫を連れて来られない同じ悩みを抱えてるのですよ、と言ってあげたいですね。

 この方は配偶者を連れて来られたら申請の道も開けたでしょうが、その「決断」ができなければ、ほぼ助けて差し上げられる可能性は”0″でしょう。

 せっかく、多くの方が勇気を持たれて行動し、助かっているのに残念です。
 また、勇気を持って何を行動すべきかを一番よく知っているのは本人ご自身だと思います。

 幸せになられたら、いいですね!