帰化後の氏名で氏に「澤」「濱」「齋」などの旧字が使えるか、使えたか?その3

 だいぶ前に「帰化後の氏に『澤』『濱』『齋』などの旧字が使えるか?」というテーマで、国籍法改正以降は帰化後の氏に世の中に公式に存在する漢字であれば、「子の名に使える文字」以外の漢字も使えるようになったということを書きました。
 つまり、現在は「帰化後の氏に『澤』『濱』『齋』などの旧字が使える」という結論でありました。

 今日は「『昔から』、帰化後の氏に『澤』『濱』『齋』などの旧字が使えたか?」、つまり、過去に帰化した日本人で「小澤さん」や「濱田さん」が居るのかどうかということについて、書いておきたいと存じます。

 というのも、さまざまな知恵袋とか、2chなどの掲示板などで、知識が不十分で経験もない素人の方が国籍法や戸籍法のみから判断して書きこんだ、まったくデタラメの情報が流れているからです。間違った情報があまりに多いもので(というよりも本日(平成24年9月25日)時点で私が目にする全てが間違っています)、多分インターネットで調べ物をしている人は、それが正しいと思いこむほどでしょう。

 素人の人が法律の文面だけざっと読んで、「帰化者が使えない文字」などと、ホームページ上で、間違った情報を流しています。

 そして、ほとんどの話題が「どの文字が使用されていれば帰化者でない」とか、帰化した方を使用している文字であぶりだすような、馬鹿げた議論をしているのです。なんとなく「澤」や「濱」などの旧字を持つ人とそうでない人を差別するような口調が感じられる投稿なども見かけます。

 過去に帰化した日本人で「小澤さん」や「濱田さん」が居るのかどうかということについて、単刀直入に正しい答えを申し上げるならば、「たくさん居ます」ということです。

 プロの目から見ると、ずっと昔から、「澤」も、「濱」も、使えたのです。

 素人の方や行政書士としての経験の少ない方などが、いっしょうけんめい法律を目を凝らして読んで結論付けたブログなどで「使えません」と書かれていた、「澤、髙(いわゆるハシゴ高)、彅、濱、齋、邊、邉、藪、鹽、渕」など全て、経験のある行政書士に依頼されていれば(但し、ご自分から懸命に申し出ないといけません)、使用することができた文字だったのです。

 さらに笑止なのが、「法務局に『電話で』聞いて確認しました」などと書いている方もいることです。帰化申請行政において、法務局に普通に「”髙”が使えますか?」というような一般論を尋ねても法律通りの答えしか返ってこなくて当然です。さらに「電話で」大事なことが聞けるなどと、本当に思っているのか不思議で仕方ありません。あまりにも考え方が幼稚です。

 確かに、どうしても使えないケースも存在しますが、特別永住者で戦前から長くその名前を使用してこられた方であれば、帰化後の氏名として「どうしても使いたい」という希望がある場合には、使えない方のほうが少数派なのではないかと存じます。

 国籍法改正までの間に当センターから申請した方の中にも、「どうしても」旧字を使わなければならない「特別な理由」が存在する場合には、本人の希望を慎重にお聞きした上で「子の名に使える文字」以外の文字を帰化後の本名とするお手伝いをさせていただくことはございました。
 ただ、どのタイミングでどこにどのように働きかけていたかは、ノウハウに属することでしたのでブログへの記載は遠慮させていただきます。

 とくに日本国民にとって、氏と名は、原則一生変えることのできない、また、複数持つこともできない大切なものであり、さらには、帰化後の氏と名に固執することによっては帰化申請自体が不許可となってしまう可能性も含んでいますので、ASC申請支援センターに帰化申請をご依頼いただいた方のみに、特別な理由があり、特別な条件を満たす場合のみ、前向きに検討をしておりました。
 ただし、中国から人生の途中で来られた方などは、全くと言ってよいほど見込みはありませんでしたし、ほんのわずかな非常に特殊なケースを除いて、ニューカマーで「子の名に使える文字」以外の文字を氏に持っている人は居ないことでしょう。

 ただ、これまでは、いわば日本のルールに則らない文字を帰化する者が使用できる余地があるということ自体が、世の中に対し伏せておくべきことと考えていました。
 なぜならば、生まれた時からの日本人は、親の氏を受けついで暮らしていくことしかできない中、新しく帰化する者について「子の名に使える文字」しか使えないというルールがあるにも関わらず、便法によりそれ以外の文字も実は認められていたということが世間全体が知ることになれば、もともとの日本人も怒るし、ルール通りにしか名前が付けられないと信じていた帰化日本人も怒るという事態となりかねないからです。日本人が氏を変えるには、時間と労力、場合によっては多大な費用もかけて、裁判所の許可を得る事が必要であり、さらには裁判所の許可がおりるとは限らないのです。

 しかし、今後の帰化申請においては、誰もが普通に「澤」や「濱」の文字を帰化後の氏として使用できるようになることから、今後の裁判所の許可についての基準も変化することと予想され、社会全体で帰化者の氏についての知識を共有しておくことが、これまであきらめていた方への希望にもなるであろうと、一言申し上げておく次第です。

 

参考リンク:
帰化後の氏名

提供:帰化申請の「ASC申請支援センター」